VRやAIの未来 – Facebookの未来戦略

Kazu Shimura

Kazu Shimura

志村一隆

 VRだのヴァーチャルだの耳慣れない言葉は、脳には届かない。英語やカタカナが乱立する文章は見た目が悪い。いや、多少聞きかじった人だって「AI?人工知能だっけ?もうこれ以上要らないよ」と思ってる人もたくさんいるだろう。先日行われたFacebookのイベントでも同じことを言っていた。「友達とチャットして、ニュース見て、それで充分。人工知能になにができるの?」彼らの答えは「たくさんある情報から人工知能があなたにピッタリのモノを選んで表示してるんです」というものである。

 なんせ、Facebookには毎日10億回投稿、1億時間も動画が見られ、20億枚も画像がアップロードされる。そんなデータの砂場からどうやって金を取り出すの?ずっと簀の子に頼るの?機械でガサっとやったほうがいいでしょ?というのがIT側の言い分だ。それでも、デジタルに不慣れな人は「簀の子で充分。自分で好きなものはわかってるし、プライバシー情報抜き取られるのはイヤ」と言い続けるだろう。

 シリコンバレーのIT系の人たちの頭には「データ+テクノロジー=ハッピー」という等式が埋め込まれている。ネット空間のプライバシーと公共性の境界の共通見解はまだ誰も見いだせていない。。。

 なんて能書きはともかく、先日Facebookが10年後の未来戦略を発表したのでまとめてみよう。ココ(F8 Videos On Demand)で全部見れる。 

 

10年後の集中分野

 

FB10 

 マーク・ザッカーバーグが挙げた領域は3つ。

  1. Connectivity:インターネット接続のインフラを提供
  2. AI(Artificial Intelligence):人工知能の開発
  3. VR(Virtual Reality)とAR(Augmented Reality):仮想現実・拡張現実
FB AQUILA

無人飛行機「AQUILA」

 まずは、ネット接続の拡大から。バルセロナMWC16(モバイル見本市)の講演でも言っていたが、「世界にはインターネットを使っていない人がまだ40億人いる。そんな彼らにインターネットを利用してもらいたい」というのが彼が最近よく言うことである。人口が集中してるのにいまだに無線インフラが整ってない地域。アフリカなどに無線インフラを提供する。どうやるか?人のまばらな田舎は、人工衛星や太陽電池で飛び続ける無人飛行機を飛ばすらしい。そこから電波を飛ばす。凄っ。

画像認識

AIによる画像認識

 次にAI(人工知能)。Facebookの人工知能は、画像検索や翻訳などに使われている。毎日何十億と集まる食事や夕日の写真やお店の紹介をタグ付けし誰に表示するかを選択してる。なにしろ彼らの人工知能システムは1秒間に600万回なにかの判断をしてるらしい。これは処理スピードが速いのか?量が凄いのか?どちらを言ってるのかはわからなかった。人間の脳と比べても凄いのか?どうなのか?それもわからなかったが。。(ちょっと調べたら人間の脳は遅い処理スピードのマシンが何兆台も並んでるとか。いやそうじゃない。とか色んな意見があった)ともかく、毎月9億人がFacebookのメッセンジャー(メッセンジャーとはLINE、またはSMS、ショートメッセージと同じサービスと思ってください)でなにかしらチャットしてるんだから、処理する情報量たるやもの凄いんだろう。

VR画面上でセルフィー(自分撮り)してる

VR画面上でセルフィー(自分撮り)してる

 最後に、VR(仮想現実)。イベントでは「ソーシャルVR」なるコンセプトが語られていた。ゲームや映像を見るだけでなく、離れた場所にいる人たちがVR空間で話したり、触れ合ったりすることを目指す。卓球をする様子やロンドンとスタジオでセルフィーする様子を紹介していた。デジタル空間のコミュニケーションはメールやチャット、それに映像だったが、そこに触感が加わる。VRを利用したコミュニケーションは、デジタルコミュニケーションの拡張であり、リアルとデジタルの中間でもある。ってことだろうか。

 

メッセンジャーでショッピング

 

SPRINGというショピングサイトを利用してみた

SPRINGというショピングサイトを利用してみた

 こうした10年戦略のなかで、いま実現されてるのがAI(人工知能)を使ったメッセンジャーでユーザーとコミュニケーションを取れるサービスである。どんなものかというと、ユーザーは人工知能(つまり機械)とメールしながら、服を買ったり、ホテルを予約する、あるいは好みのニュースだけをメッセンジャーに送ってもらう。企業にとっては、コールセンターを作り、人間を管理するより安くて簡単。それにメールのやりとりでお客さんの好みや、売れ筋などの情報が溜まっていく。ユーザー側はどうか?わざわざショッピングサイトに行かずとも、いつも使ってるメッセンジャーで、完結する。から面倒クサくない。それに暇潰しになる。Facebookにとっては?いままで無料のメッセンジャーでショッピングしてくれたら少しは儲かる。嬉しい。つまり、全員が嬉しい。日本でもできるのでゼヒ体感してほしい。SPRING(ショッピング)、Hi Poncho(天気情報サービス)など40社と提携してる。

 人工知能(機械)が相手をしてくれるサービスを最近は、ボット・サービスと呼ぶ。ロボットのボット。というと目新しいようだが、電話の自動受付サービスを思い浮かべれば、考え方自体は誰にでも馴染み深いものだとわかってもらえるだろう。それにSMSでも同じようなサービスがあった。質問を投げかけると答えが返ってくる。「明日のテレビ」っていう著書で紹介した気がする。。

"chacha"というサービス。SMSを利用していた。

“chacha”というサービス。AIではなくアルバイトが調べて返事していた。「王貞治選手は何本ホームラン打ったか?」質問したところ。(2008年頃か)

 

kwanzoo

“kwanzo”:クイズの”ウィジェット”。クイズがインタラクティブ性を高めるといわれていた。

 

21世紀の通信はFacebookが握るんだろうか

 

 Facebookがインフラやコールセンター機能を提供するとなると、通信会社と競合していく。ネットサービスはいまあるビジネスをネット化すればいいのが鉄則。だが、Facebookの取組は、その大掛かりバージョンである。21世紀の通信はこうしたITプラットフォーム企業に代替されてしまうのかもしれない。

 もうひとつ。CNNやNBCがFacebook上でライブ動画を流している。その昔「テレビは時間であり、その編成がテレビをテレビたらしむ」という議論があったが、どの映像をタイムラインに組み込むのか主導権はユーザー側にある。テレビでは見れないVR(仮想現実)動画にも投資する。通信だけでなく放送もこうしたITプラットフォームが握ってしまうんだろう。

(参考)
傘を持っていくべきか答えてくれるLINE Botを作ってみて分かったこと(内山紀明)