この時代の変わり目にvol.2

関口宏(自称テレビ屋)
志村一隆(メディアコメンテーター・独立メディア塾・メディア事情)
西内啓(統計家)

1 ガラパゴス老人

2 中国のガチャガチャは進んでる

3 世界的な課題を経済学で見てみると

4 軍事より経済の安定を

5 若い人は変化を望んでいない

6 AI で遊ぶ子供

7 格差の問題

8 アメリカの格差

9 シェアリング

10 物物交換が新しい

11 エコで地味でも充分

12 今後の石油の存在

13 新物質の摸索

14 温暖化対策

15 将来はあかるい?

16 若い人の不安

17 人類は賢くなってる

18 テクノロジーで人間不信

19 フラット化

20 幸せって何ですか?

21 ポジティブサイコロジー

22 ゾーンの研究

23 幸せを感じる時

24 少子高齢化でもあかるい未来

25 教育と研究であかるい未来

26 好きなものに偏っていい ただ・・

27 洞察力と検証

28 便利さに失敗する

29 意識高い系の若者

30 30年後人類は幸せ?

31 人類とAI

「1990年代になって、データを取った方がちゃんとした医療ができるということが、知られるようになってきた」

関口 えー。さて今月は、この時代の変わり目にのパート2ということで。若い方に、わたくしが話を伺うということになりました。わたくしはこの時代の変わり目をなんとなくは感じておるんですが、もう詳しいことは、ほとんどわかりません。いってみれば、ガラパゴス老人でございます。そこで、よくご存知のメディア事情をこの独立メディア塾で担当してくれている志村さん。で、今日は、統計学でよろしいですか?統計学に詳しい西内さん。

西内 よろしくお願いいたします。

関口 もう、あなた方はね。いろんなことをご存じでしょうから。あのカタカナ語が飛び交うと思うんですよ。それ禁止ですから。

志村 そうですね(笑)。

関口 いいですか。このガラパゴス老人に。。

西内 カタカナ使ってるじゃないですか。

関口 これくらいは、いいじゃないですか。わたしに、わからない話はしてはいけない。わたしに、わからせて欲しい、ということで、お約束よろしくお願いします。で、まずですよ、わたしはなんとなく最近、強く感じるようになったのは、「あれ、毎日毎日、日が昇ってやってくるけれど、流されているうちに、時代が変わっちゃったかなぁ」ということを強く受けるわけですよ。お二人も、なんか時代が変わってるっていう感覚がありますか?

西内 そうですね。それは日々強く感じています。

関口 どの辺に感じますか?

西内 そうですね。たとえば、自分もともと医学部で勉強してたんですが、実は1990年代ぐらいから、大きな変化が起きてまして。

関口 そうでしょ。あの世界は。

西内 なにかというとですね。エビデンスとか科学的根拠に基づいて、医療をしようと。。。

関口 いまエビデンスって言いました(笑)

西内 言い換えました、科学的根拠って(笑)。科学的根拠に基づこうという考え方がありまして。で、科学的根拠ってなにか?っていうと、要するに経験とか勘とか。それを元に生物学の知識を論理的に使えば、いちばんいい医療ができるかなっていうところで。みなさん、多分いまのドラマとかに出てるお医者さんたちも、結構そういう風に治療されてる。「俺の勘がこう言ってるんだ。ほら見てみろ」みたいな感じが多いと思うんですけど。意外とそれをやるとあんまり良くないよねと。それより、ちゃんとデータを取ってですね。それを使ったほうが、より間違いのない医療ができるよねっていうのが。実はそういうのが知られてくるのって、1990年代なんですね。っていうのを、自分はそういうのを聞いたときに、衝撃を受けまして。大学に入ったのが2000年なんですけど。大学入試のために、小論文の対策もしなさいと言われて、いちおう問題集を買ったんですね。その時にもう既に、科学的根拠に基づく医療について次の文章を読みなさいという、小論文の練習問題みたいなのがあったんですよ。それって普通、初めて科学者が言い始めてから、そしてそれが地方の高校生が、小論文で考えなければいけなくなるまでって、計算すると7年ぐらい。初めて科学的な論文のなかで言われ始めた概念っていうのが、わずか7年で、田舎の高校生が勉強しないければいけなくなるっていう。すごい大きな早い変化だなぁと。

関口 それは、そういう時代になっていくんだから、歓迎しないといけない場面もあるんだろうけど。言ってみりゃ、機械頼りの医療になるっていうことではないんですか?

西内 そうですね。まず、ひとつの考え方として、よかれと思ってやることが、意外と逆効果っていうことが知られてくるようになったんですよ。

関口 人間の勘で。

西内 そうですね。たとえば、急性心筋梗塞を起こしましたよと。それで一命を取りとめましたよと。で、その後、結構不整脈で亡くなっている方がいらっしゃるんですね。

関口 ほお。

西内 まぁ経験上よく知られていて。で、皆さんそれを聞いたら、論理的に考えると、じゃぁ不整脈の薬使えよと、皆さん絶対そう思うじゃないですか。

関口 そうなりますわね。

西内 で、実際にちゃんとデータをとって、その不整脈の薬ってどれくらい効くのかなって、ちゃんとデータをとって研究してみると、逆にその状態で不整脈の薬を、当時使われていた人の方が死亡率が高いじゃないか、っていうことが、実はわかってきて。だから、理屈上正しくても、データを取るとまた別だねと。そうすると、より間違いのない判断ができるようになるよねということで、いま医療の世界で生まれたそういった考え方が、たとえば開発経済かなんかで。じゃあアフリカの経済をよくしようみたいなところでも、実際にデータをとってみると、よかれと思ってやったことがむしろ地域の経済が、あまり良くなくなってたとか。

関口 あぁ。そういうことってあるのかなぁ。あるかもしれないなぁ。

続く

「なんかインターナショナルでやっていくんじゃなくて、自分たちさえ良ければいい。」

前回

関口 志村さんは、どういうところで時代の変化を感じてますか?

志村 僕はですね。まぁ、日々感じてるんですけどね。

関口 日々。どんなことで。

志村 その、たとえば漢字書けなくなるとか。

関口 それは衰えてるだけ(笑)。その漢字書けなくなるってのは、その「ITだ」「スマホだ」やってるうちに、自分で字を書かなくなるっていうことですか?

志村 そうですね。自分で字を書かなくなる。

関口 そういうことでもって、自分で書く能力が衰えてくる。

志村 あるいは、そういう言葉でいえば、たとえば、トイレとか、こないだホームを歩いたらですね。「一列に並んでいただいてありがとうございます」ってデカデカと書いてあったんですけど。

関口 なにがいけませんか?

志村 いままでだったら、多分「一列に並んでお待ちください」とか、「一列に並んでください」みたいなお願いだったと思うんですよね。それが、いつの間にか、いつごろからか、「綺麗に使ってくれてありがとうございます」とか。

関口 それは、なんの変化なんだろう。

志村 いままでは、なんというかお客さんにお願いしてたっていうのが、さらに、一歩進んで、相手がお願いしたあとの、自分たちの思ってる行動をしてる前提で、もうお礼を最初に言っちゃうっていう。

関口 いやなんですか?

志村 ちょっと嫌なんですけど(笑)。そういう言葉遣い的みたいなのって、ほんとによく変わるなぁって。

関口 あぁ。そう。なんかちっちゃなことですな。

志村 すみません(笑)。

関口 でも、なんかほらIT詳しいじゃないですか。メディアも詳しいじゃないですか。大きいほうでいうと、なにか、あぁ時代変わっちゃたなっていうのあります?

志村 たとえば、この間、中国に行ってきたんですけども。いつの間にか中国のほうが、いろいろ進んでると。

関口 どういうとこで。

志村 ガチャガチャも、硬貨じゃなくてスマホで決済したり。

関口 ガチャガチャって、子どもが、なんかこんなことして、なんか出てくるやつでしょ。オマケみたいなやつ。

志村 はい。あれ、日本ではまだ小銭入れてやるわけですけど。中国って、こういうスマホのペイメントっていうか、まぁなんでもこれで払っちゃうわけですよね。タクシーでもなんでも。そういうのが日常の生活に広まっていて。普通に使っておるなと。

関口 うん。

志村 いままで、日本人がアジア行くというと、どちらかというと上から目線というか。行ってなんとなく歓迎されるみたいなイメージで行ってたんだと思うんですけど。

関口 抜かれた?

志村 抜かれてんじゃないですかね。そういう感じしましたね。

関口 それはあっという間?

志村 えぇっと。このだから、10年。2000年以降。

関口 ひっくり返った?なにがそうさせましたか?

志村 それは、そうですね。日本人というか、日本企業というかが、まず外に行かなかった。

関口 行かなかった?日本人が知恵を貸したわけじゃないんだ。中国人独自で始めたの?

志村 えっと。そうですね。それは最初に日本人が技術供与したりとか。

関口 うん。なんか最初にやってたでしょ。

志村 やってましたね。やってました。

関口 それを、そのうち向こうがマスターして独自に自分たちで始める。

志村 始めるようになるわけですね。で、それはまぁ、自分がこの前行って思ったのは、自由貿易なり、なんなりOKよと。自分は、そういう教育というか、洗脳をアメリカで受けて、そういう考えだったわけですけど。向こう行ってみたら、YouTubeもFacebookも、全部中国製。ITサービスは全部中国製なわけですよね。それはその日本とか、技術供与したりとか、アメリカの技術をパクって、国内だけで開発して、外国企業は入れずにやる。

関口 そこはなんかさぁ。まぁ、中国の悪口を言うつもりはないんだけど、わたしも詳しいことはわからんけど。なんか協力的じゃないよね。あの人たち。

志村 中国人?

関口 うん。なんかインターナショナルでやっていくんじゃなくて、自分たちさえ良ければいい。

志村 そうですね。

関口 そういう感覚っていうのもね。我々もちょっとショックなんですよ。まぁ、経済的にも中国に抜かれたってこともあるけどね。もっとインターナショナルでもの考えてくれなきゃっていうのが、我々世代の心配。

続き

「もうダメですよ。戦争したら。世界中が損をする」

前回

志村 なんかいろいろ本とか読むと、中国人は中国の文化をアジアに広げる。周りの国は中国の真似をしてるけど、周りの国の文化を取り入れたことは、全く歴史上ないと。

関口 それはね。古い話でごめんね。中華思想っていってね。あれは我々が地球の真ん中にいるっていう。あれはもう大昔の中国人のものの考え。まぁ、中国人の力が強い時代があったじゃないですか。歴史上ね。あんとき出来てる考え方なんだろうけど。いまだにある?それが。

志村 いや、なんかそれが。まぁ、いまだにあるんでしょうね。

関口 ある?

志村 それが、その日本がいまだにゴタゴタしておる。北朝鮮とか中国とか。なんでその隣国なのに、こうやっていがみ合わなきゃいかんのよと。

関口 そりゃ、大きなテーマですよ。

志村 ほんとはアジアで、ひとつの経済圏なり文化圏なり、わかんないけれども、そういう大きな傘のなかで、いろんな多様性があるっていうなかで、いろんなITなり、経済、医学なりがあれば、ヨーロッパ、アメリカと対抗っていうのも変ですけれど、ひとつの基軸が作れると思うんですね。

関口 だけど難しいよねアジアは。

志村 難しいですけど、それをやはり乗り越えないといかんかなみたいな。

関口 乗り越えないといかんですよ。地球には限りがあるわけだから。いがみあってたってダメでしょう。

志村 そうなんですよ。なんで、いがみ合わされちゃってるのか。

関口 そこだよ。そこは、どう考えてますか?

西内 そうですね。あの、まずいがみ合いっていうところでいうと、あの確か国連だったと思うんですけど、経済学者が集まって、世界の課題で、いったいなにがいちばん解決しやすいかってことを、本気でデータ使って議論するっていうことを、やったことがあるんですけど。そのなかで、要するにいつか技術が発展していくと、いますごく大変な課題も、まぁ要するに、あのお金って、経済成長って世界全体ではしていくので、そしたらこうやって、まぁ50年後の人類のほうが、いまよりは多分いっぱいそういうリソースが使えるだろうなと。

関口 そうなの?間違いないですか。

西内 いちおう、そういうのはデータ上ありまして。で、なので、いま解決しやすい問題から、まず解決していこうよと。たとえば、そのマラリアをどうこうするとかっていう話だと、それはもうすごく、こんだけのお金でこんだけの人が救えるんだよって。もう明らかに、そういう感染症対策やったほうがいいよねとか。あとは水をすごくきれいにするとかも。

関口 はいはい。でかい問題だよ、水は。

西内 それも、すごくパフォーマンスが高いんですけど。多分いくつか彼らがあげた30個くらいの課題のなかで、いちばんこれはもう明らかに、割りが合わないねっていうのが、紛争を解決するために戦争をするというのが、こんだけのお金かけて、こんだけのリターンしかないのかよ、みたいな感じで。それは、もう無理にそうやって、軍事力でどうこうするのは筋が悪いねっていうのがでてきたんですね。それは、ほんとに客観的に。

関口 それは、若い人たちもみんなそういう考え方なの?

西内 そうですね。

関口 あれ、昔はね。戦争して儲かった国はたくさんあったんですよ。だから、いまだに、そういう考えを持った人がいるのか、いないのか知りませんが。もうダメですよ。戦争したら。

西内 そうなんですよね。

関口 世界中が損をする。まぁ、一部は儲かるのか知らないけど。そういう考え方は、この世代はあるんですか。

西内 そうですね。自分は少なくとも、それを聞いて、あぁそうだなぁというのはありまして。

関口 ここが心配なのよ。ガラパゴスからみて(笑)。

続き

テレビなんかにも、いろいろお叱りのお電話なり、メールが来るでしょ。見てるとね、おんなじ人が何回も書いてる感じがするときがある。

前回

関口 若い人たちが好戦的になってるんじゃないかとかね。

志村 あぁ。なるほど。

関口 まぁ、考え方でいうならば、ちょっと先鋭的に日本も軍事力を強くしなきゃダメだとか思ってんじゃないかなと思うんだけど。その辺はどう?

西内 そうですね。まぁ、できれば。それこそ日本はなんで経済成長したかみたいな、そういう分析のひとつとして、要するにその軍事的な支出をしなくて良かったからっていう考え方もあったりするんですね。

関口 そうですね。

西内 そうすると、そうじゃないところに、まぁいわゆる平和的な経済だったり、産業だったりとか、社会福祉だったりというところに、そのお金を使えたっていうところが、すごく子有利なところだったよねっていう話も、たとえばあったりしてですね。ただ、周りがすぐ軍事力を持ち出すと、いっぽう的にやられるのは嫌だから。結局損だけど、みんなお互いこう。追いつかなければいけないというのは。

関口 無駄だよね。

西内 それを、ホントに外交努力のところで。

関口 もちろん。外交のところでもっとお金を使えば、どうにかならんかなぁなんて、わたしたちは思うけど。そこはどうですか?そうだ。お断りしとくけど、こちら40代。こちらが30代。

志村 49ですけど。

関口 えぇ。まぁ。

志村 僕の、だから周りというか、その自分が、普段直接話してる。自分の周りはいないですよね。そういう好戦的な。

関口 ということは、そのお友達は、類は友を呼ぶといいますから。志村さんみたいな人たちが多い。

志村 平和な。

関口 あぁ。平和主義者。

志村 いちおう。

関口 だけど。

志村 だけど、それはホントに一部でしょうね。

関口 一部なの?

志村 だと思うんですよ。

関口 じゃあ先鋭的な人のほうが多くなっちゃったの?

志村 数的には、わからないですが。。

関口 統計学は?(笑)

西内 どうでしょう。そこのデータはまだ見たことがないです。ちゃんと調べたことはないです。

志村 明らかに、だから自分が若いとき、メディアに接していたときの言論と、いま出てきてる、まぁネットも含めた言論の中身では、その好戦的なのは目に触れますよね。だから、その数が増えているのか、一部の人が大量にやってるのか。

関口 どっちなんですか?

志村 うーん。

関口 あのね。テレビなんかにも、いろいろお叱りのお電話なり、メールが来るでしょ。見てるとね、おんなじ人が何回も書いてる感じがするときがある。だから、数で測れないかなって気がするときがありますが、どうですか?

志村 ただ、たとえば安倍政権の支持率がそんなに下がらないとか、20代がいちばん支持率高いとか。あぁいう数字をみてると、データとかで議論しようとしたときに、結局そうなのかと思いつつも、自分の感覚とは違うし、その辺はどういう風に対処したらいいかっていうのは日々考え中ですね。結論出てない。

関口 その辺は、統計はたくさんお持ちですか?

西内 そうですね。あの選挙の調査なんかも結構お手伝いしてた時期があったりするんですけど。それでいうと、まぁ安倍政権を支持してるってみて、外交的なこととか軍事的なこととか、あれまるまる全部が支持されているというわけではないんですよ。で、そうなったときに、実際に支持してる人と支持してない人と、どこが違うかなっていうと、やっぱり経済的なところ、景気対策とか雇用対策とか、そういったところに関心が高い人っていうのは、そのアベノミクスというところで、実際失業率が下がったりとか、まぁそういうところがあって。なので20代が支持してるっていうのは、どちらかというと外交的なところ、軍事的なところはさておき、あの自分が早く就職とか決まりようにしてほしいとか。失業とかをしなくてもいい。正規雇用にしてくれるんだったらそっちの方がいいみたいな。そっちのほうがどちらかというと、あの支持につながっているような。

関口 そうらしいね。わたしの番組でも、若い人たちに意見を聞くことがあったんだけど、なんか安定を望んでいる若い人たちは。ねぇ。だから、変化を若い人たちは喜ばない。

(続き)

年を追うごとに、人類の平均的IQってどんどん上がってきているんですよ

前回:軍事より経済の安定を

関口 この変化はどうですか?僕はいちばん初めに申し上げたとおり、時代はどんどん変化している。だけど、若い人たちはあまりその変化をあまり喜んでないのかな。

志村 そうでしょうね。

西内 そうですね。多分、ちょっとまぁ二極化という訳ではないんですが、すごく若い人っていっても一枚岩じゃなくて。意識が違う人たちに分けることができるのかなぁと。つまり、そのいわゆるテクノロジーを使って、変化すればするほど楽しいよねっていう側の人たちと。

関口 この人がそうです(笑)。

西内 そうですね。ていうのと。やっぱり、これからそうやって、たとえば若いけれども、そんなにITが得意じゃないっていう感じであれば、それが従来通りの父親がやってたような、仕事をやったりしていたいみたいな。自分は、そういうITとかで消費はするけれど、たとえばプログラムを書くようにはなるわけでも、コンピューターを使いこなすわけでもない。ので、なんか従来通りのそういう仕事がしたいのに。でも、だんだんそのパイっていうのは結構減ってきていて。

関口 減ってんでしょ。

西内 つねに新しい仕事っていうのが増えてきている。いっぽうで、そんな仕事、もうだんだんなくなっていくよねっていうのが、分かれていて。そうすると、そのなんか、なくなっていく仕事っていうところに対して、思い入れがある人っていうのは、これ以上そういう流れやめてくれよというのも、いらっしゃるのかもしれない。

関口 いる。だけど、それはどんどん少なくなるでしょ。

西内 ですよね。

関口 これだけ時代が動いてるんだから。ねえ。これがどこに行っちゃうの?というのが、私の心配。老婆心ていうのか、老爺心というのかね。わたしたちは、もうすぐ終わっちゃうんだけどさぁ。この世の中、どこ行っちゃうの。まぁ世界的に見てもね。ある意味では、テクノロジーっていうんですか。こういうものは。ねぇ。こういうものは、どんどん発達するけれど、人間の考え方は、時代逆行し始めてないかい。あの第二次大戦が終わったとき、日本は負けましたけれども。世界中にふわっとした空気ができたのは、やっぱり世界がひとつになっていこう。みんなで問題を解決していこう。というほうへ、動き出したんですよ。ところが、こういうもんが発達して、こういうもんがいろんなことが言えるようになってきて、自分たちさえよきゃいいじゃないの。トランプなんて人は出てきちゃう。これは時代逆行し始めちゃったかな。モノの考え方はね。これは、どんどん進んでっちゃうんですよ。この辺が、心配なんですよ。これはどう考えますか?

西内 そうですね。多分、個人のレベルの話と、社会のレベルの話と、両方要因が思うんですけど。まずポジティブな話としては、あのフリンていう、ジェイムズ・フリンかな。心理学者でフリン効果って呼ばれるものがあるんですけれど。それをはなにかというと。結構、年を追うごとに、人類の平均的IQってどんどん上がってきているんですよ。

関口 上がってるんですか?

西内 上がってるんですよ。たとえば、昔のIQテストが生まれたくらいの時期の。当時の、たとえば、どこかヨーロッパの田舎の方で。なんでしょう。たとえば、「ラクダと羊の共通点てなんですか?」みたいなことをして。我々だったら、たとえば「それは哺乳類だね」とか。そこまでいかなくても「4本の足で行きますね」「あったかいですね」とか「毛が生えてますね」って言われるじゃないですか。っていうのを、たとえば、現代人とのギャップのなかで、「いやぁ僕はラクダを見たことがないよ」とか、「この辺にはラクダがいないよ」とか。なんか、そういう具体的な事物じゃないと考えられないというところから、たとえば「同じ哺乳類ですよ」っていう。そういう集合論とか、論理の世界っていう。物事を抽象化して考えるみたいな能力っていうのはIQのなかに入ってくるんですが。その能力っていうのは、少しずつ、いくつかずつ上がってきていて。だから、いまの平凡な現代人が、100年前とかに行くと「こいつはすごく科学的な思考ができる人だな」みたいに。

関口 言われるのかな。

西内 「あれがなぜなのか?」というのは、よくわからないけど、時代とともに、少しずつそうやって、どんどんIQが上がってきているっていうところは、フリン効果って言われているところで。

関口 それはこういうものの影響ですか?

続き:AIで遊ぶ子供

賢さって触れたり見たりとかできないものを測定できるっていうのが、IQの革命的なことなんですね。

前回:5. 若い人は変化を望んでいない

西内 だんだん触れていくっていうことが、物事を無意識のうちに触れてくるものっていうのがっていうのが、多いっていうのがまぁその
そうすることでより高度な推論をするとかこととかがどんどん上がってきてるのかなあって言う話があるんですね

関口 ちょっと安心しちゃうけど。大丈夫ですか(笑)。

西内 それなので、はい。たとえば、これからあと人工知能とかが、増えていく増えてきて仕事が、話があるんですけどもそのフリン効果ってことを考えると、子供たちが、もうちょっとしたら遊びだすっていう。オモチャのAIっていうのができたときに、それを使ってなにか面白い遊びを考える能力っていうのは、出てくる世代っていうのは、そろそろあの自分たちの子供とかもうちょっと下くらいから出てきだしたりすると、我々それをたとえばコンピュータっていう概念を、子供の頃から当たり前のようにゲームで触っていて、そうするとなんかバグがあるっていう表現ていうのを、我々は当たり前のように小学生の時に。

関口 わかりません。なんでしょうか(笑)。

西内 バグっていうのは、要するにこのソフトウェアが動いていて。

関口 ソフトウェアっていうのは、どういうものですか?

西内 ゲームが動いていて。

関口 あぁ。ゲーム。

西内 普通だったら、こういう理屈でゲームが動いているっていうはずなんだけど。なにかこう、作った人が見落としてるようなものがあると、変な動きをしたりすると。それを利用するとちょっとこうなんかゲームが有利に遊べるよ、みたいな話っていうのが、結構子供の頃から当たり前にあって。で、そうするとこうなんかバグを取る仕事をする人がいるらしいよとかですね。

関口 いわゆる作った人の。なんか見落としたもの。

西内 そうですね。

志村 不良品をピっと。

関口 ほお。

西内 ていうのが。そういう風なのが、なにかこれはプログラムで動いているとか。こういう風にやったらこうなるとか。こういうデータがあるとか。さらにいうと、なんでしょう。自分が遊んでたゲームのなかで、たとえば強さとか、賢さみたいなことが数字で出てくるんですよ。これって結構自分たちの世代は当たり前のように受け入れているんですけれど、これはすごく革命的なことで。さっきも言ったように、IQって100年前には誰も知らないような。一部の学者だけが知能ってどうやって計れるかって。統計学をめちゃくちゃ頑張って作って。こういうテストを受けたら、この人の賢さっていうのは、この指標で計ると、いろんな他の計算問題をやらせても、暗記問題をやらせても、大体よく予測できるような指標ができたねっていうのが、実は100年前くらいに。IQっていうのが生まれたすごく革命的なことなんですね。賢さって触れたり見たりとかできないものを測定できるっていうのが、ゲームの世界では当たり前のように、しれっと「賢さ40」とかってこう書いてるわけですよ。っていうようなよくわからないなにか抽象的な概念でも数値化できて、それをたとえば成長させるとかですね、それをどうすればもっとこう変えられるかみたいなとか、そういうことが自分結構当たり前のように、子供の頃から育って、今の仕事もですね。じゃあ会社の勢いってどうやって数にできるかなとかそういうことも考えたりするんですけれども。それって、ちょっと上の世代だと、そこがなんとなくピンとこないみたいな。

関口 曖昧として。

西内 なんなんだろうっていうのが、もしかしたらあるかもしれないっていうのを、同じことをもしかするとちょっと下の世代っていうのが、AIの使いこなし方に関して、すごいな君たちっていうのが、ギャップがそのうち出てくるんじゃないかな。

続き:7. 格差の問題

関口宏(自称テレビ屋)
志村一隆(メディアコメンテーター・独立メディア塾・メディア事情)
西内啓(統計家)

(制作)
「日めくりテレビ」