バラバラ時代

 受付を済ませて、さて、「私はどこへ行ったら良いのか・・・・・?」
「どれかお好きなものをどうぞ」とボーイさんに、ビールだの赤白のワインだの水割りをのせたトレイを差し出され、とりあえず白ワインのグラスを受けとるも、目線はキョロキョロ、キョロキョロ。

「誰か知った人がいないか」と落ち着かないまま、一歩二歩三歩と,人込みの中に紛れ込むも、「あまり目立ちそうなところはまずいよな」と思いつつ、出入り口付近で知った顔探しに躍起になりながら気がつくと、結局は私のような人達が出入り口付近に集まってしまい、会場の中央から奥はガランとしていて、「皆様、遠慮なさらず、もっと奥の方へお入りください!」とのマイクの声にも応えず、出入り口から壁伝いに人々がへばりついてしまうのが、ひと昔前の日本の立食パーティーでした。

 

 それでもたまにパーティー慣れした先輩がいて、「先ずは、ローストビーフの前に陣取るのだ。そして開会の挨拶が終わり、“乾杯!”となったらサッと皿を出し、小さな声で(厚めに2枚!)と言うんだ。ローストビーフはすぐなくなってしまうからな」と教えてくれたものです。

 実は今年に入って1月19日、この『独立メディア塾』の3周年のパーティーが、日比谷のプレスセンターで行われました。
寒い中、専門家の先生方,ジャーナリスト、新聞・雑誌・テレビ・SNS系メディアの方、そしてこれからこの分野を目指そうとしている若者達にお集り頂き、有意義な出会いをさせていただきました。
今ではもう皆さん慣れていらっしゃるのか、壁にへばりつくこともなく、小さな集団が出来ても、その集団が別の集団と交流が出来たり、それらの集団の間を行き来する人も多くいて、実に和やかなうちに交流が深まって行ったように見受けられました。
ローストビーフもそれなりに行き渡ったようでホッとしました。

 そもそもこの『独立メディア塾』なるサイトは、朝日新聞からテレビ朝日の要職を経られた当塾々長・君和田正夫氏との長いお付き合いの中で生まれました。

 それまで仕事上の関係はまったくなく、ただ時々顔を合わせて呑んでいただけの仲なのですが、お互い「70」の域に入った頃、「なにか・・・・・我々に出来ることはないか・・・・」と双方からの意思表示、つまり「啐啄同時」的な共感から生まれたサイトなのです。

 かといって「ネット」の世界には素人同然の二人、そこで今このサイトの「メディア事情」を書いてくれている志村一隆氏を抱き込み、細々ながら新メディア(今の時代、もう新しくも何ともなくなってしまいましたが・・・・・)に挑戦し始めたのです。

そして3年。

 細々は、多少厚みが出て来たと仰ってくださる方もいて嬉しい気持ちにもなるのですが、よくよく聞けば、こうしたサイトは最早、腐る程、いや失礼!山のように存在していて、残念ながら、そう簡単には知名度は上がらないものなのだそうです。

 それにしましても、その山ほどもあるサイトを人々はどのように利用しているのか、そしてそれは本当に人々の役にたっているのか、余計な老爺(婆)心が湧き上がってくるのです。

 と申しますのも、私の生業はテレビ屋。
それでなくとも「テレビ離れ現象」に頭を痛めている一人として、「こんなに色々なものが氾濫、失礼!増え続けてしまって、マスコミ本来の使命が果たせるのだろうか」との心配が日々募るばかりなのです。

 私の若い頃は二、三の新聞・週刊誌、そしてテレビを時々見ておけば、翌日の仲間との会話には不自由はありませんでした。それだけで充分議論も出来ました。

 しかし今や、仲間との共通の話題が減りました。みんなが見たリ読んだりしているもので共通するものが激減しているのです。

「あれ見た?」「え、なにそれ?」「あれ読んだ?」「知らない!」
そんな空振り会話が珍しくなくなりました。

 でもそれぞれは、スマホ・PCなどからの情報を自分流に持っていて、それで日々事足りているようで、よほどの大事件なり出来事でない限り、情報の共有が出来なくなっている時代になっているように思えてなりません。

つまりは、情報過多による『バラバラ時代』

・・・・・これって、今迄世論をまとめる使命を担って来た「マスコミ」の重大なるピンチと言ってしまうのは大袈裟でしょうか。

 それでなくとも世界に目を向ければ、人類の理想に果敢に挑戦してきたEUから、イギリスが脱退するのに続くかのような動きを見せる国が続出しそうなバラバラ状態。
アメリカのトランプ現象にしても、アメリカを二分してしまった結果であり、これとて『バラバラ時代』の象徴のように思えてなりません。

この『バラバラ時代』の行く末に何が待ち受けているのか。

 そこにヒントを提供するのが「マスコミ」の大きな仕事の筈なのですが・・・・・

テレビ屋  関口 宏

第3回受賞作品(2016年)

登龍門

4月 キューバ人の「プライド」とメディアの「偏見」~ハバナ現地レポート
斉藤 真紀子 (フリーランスライター)

5月 りんなとコルタナとホロレンズ 日本マイクロソフト de:code 2016より
山下 潤一郎 (ブライター・レイター)

10月 難民キャンプの「生きる力」
安田 菜津紀 (フォトジャーナリスト)

オープントーク

6月 「パンドラの箱」をあけたトランプ
横江 公美 (政策アナリスト・東洋大学グローバルイノベーション学研究センター 客員研究員)

9月 イギリスEU離脱という逆境から私たちは何を学ぶべきか
山嵜 一也 (建築家・山嵜一也建築設計事務所代表)

11月 87歳の「怪優」、気迫の『土佐源氏』

ドキュメンタリー

7月 被災地は今「家族を失った遺族の5年」
株式会社東日本放送

10月~ 「シジュウカラの夜明け」
日めくりテレビ