ニッポンを知りたい

H.Sekiguchi

H.Sekiguchi

関口 宏

 「私は日本人。だけど・・・どれだけ日本のことが分かっているのだろうか?」

 長年、日本に生きて来て、そんなモヤモヤが歳とともに強くなるような気がするのは、私だけのことではなさそうです。

テレビで「旅もの」が高齢者に好まれるのはその現れで,四季の恵み・自然との共生・そこに育まれた日本人としての「共感」を噛みしめているように思われます。
 「日本に生まれて良かった。この国を大事にして行ってくれ。」と、次世代に願いを託す想いも含まれているのでしょうか。

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 かく言う私は東京生まれの東京育ち。東京を離れた暮らしをしたことがありません。
若い頃は「それで良し!」「何てったって東京は日本の中心!」「こちとら江戸っ子でぇーい!」と強がって、地方の仕事から東京駅に帰ってきて「ほっ!」としたり、経済成長期には、飛行機の窓から見る東京の空が、どす黒いスモッグで覆われていても、そこに飛行機が突っ込んで行くのに、どこかで「ほっ!」としたのは何だったのでしょう。
 やはり東京の人間にも故郷感覚はあるのです。

 しかし年を重ね、あちこち旅をしてみますと、若い頃には気がつかなかった、その土地その土地の人々の暮らし向きに、同じ日本人でありながら知らなかった面白い話が沢山あることに驚かされ、元気なうちにもっと知っておきたいと思うようになりました。

 そんな折、テレビ局から「風土記」的な番組のお誘いを受け、この10月からスタートしました。
しかし当初、時間的・予算的制約から一本一本地方をまわることが許されず、はてさてどうしたものかと、制作者一同頭を悩ませていたところ、地方地方のアンテナショップなるものが、銀座界隈に集中しているとの情報を得て、「なら出来る!」ということになりました。

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 そのアンテナショップからスタートして、その土地その土地の郷土史家さんをお呼びして、都内にある郷土料理を出す居酒屋でお話を伺いながら一杯やるという企画。決して嫌いではない私に、もってこいの番組になりました。

 現在、山形県、高知県、大分県、長野県,滋賀県、の収録を無事終了。(このコラムをお読み頂く時点では、すでに放送が終わっているものもあるかもしれませんが、悪しからず・・・・・)

 多少中身をご紹介すると・・・・・

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※ 滋賀県といえば琵琶湖。琵琶湖の水がなければ「京都も大阪も生きては行けぬのだ!」と胸を張る滋賀の人々の話。

 

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※ 減塩運動で長寿日本一になった長野県の努力話。

 

 

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※ 「赤猫根性」と自分達が認めるマイナス面が、プラスに働いたと分析する大分の人達。(山が多い大分では、集落同志の繋がりが希薄で、猫のように余所余所しくなるのだそうですが、それがまた独立心旺盛な気性にも繋がっているのだそうです)

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※ 客のおもてなしが皿鉢料理、つまり大皿てんこ盛りなのは、かみさんも一緒に呑みたいからだという高知の吞ん兵衛話。

 

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※ ボランティア出動率日本一は、豪雪地帯では、助け合わねば生きて行けないことが身に染みているからという山形県。

 

 そうした話を、その土地の酒を頂きながら聞くと、その土地のイメージが湧き上がって来て、実に豊かな気分になれるのですが、そこにもうひと味、付け加えました。

 「民謡」です。
若い頃にはそれほど興味がなかったジャンルですが、その土地のことを知り、歌詞の説明を理解した上で聞いてみると、これまた何とも言えぬ感覚が湧き上がって来て、「ああ、これが日本か・・・・」との想いを新たにするのです。

 そもそも「民謡」とは、労働歌とか祭り唄とかご自慢の風土を唄ったものが多いようですが、それはそれなりに、生まれて来た根強い背景があったのでしょう。
しかし意味が分からず聞いていると、どれも同じようなものに聞こえてしまうように、若き日の私は感じていました。

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 そこで今回知った山形県・「最上川舟唄」を一節。
日本海と山間地を、最上川で結ぶ物流を生業としていた船頭さん達の、50日ほど留守にする家族を思う唄でした。

 “エンヤコラマカセー 酒田さ行ぐさげ まめ(達者)でろちゃ
ヨイトコラサノセー はやり風邪などひかねよに エーエンヤーエー“

 何か絵が浮かんできませんか。
「・・・・・日本に生まれて良かったぁー・・・・・」を、是非ご一緒に味わって下さい。

 

 テレビ屋  関口 宏

 

『ニッポン風土記』 BS-TBS 毎週土曜日 昼12時より

『ニッポン風土記』 BS-TBS 毎週土曜日 昼12時より