インフルエンザ

H.Sekiguchi

 やっと3月。
「ここまで来りゃ、もう、こっちのもんだろう!」と言いたくもなるこの冬は、
酷寒・豪雪、そしてインフルエンザに悩まされました。

 迂闊にも私も、「インフルエンザ」にやられてしまいました。
初めての経験は「B型」でした。

 「ワクチンは打っていたのですが・・・・」と医者に言ってみたものの、「だから、軽くて済んだのかもしれませんよ」とあしらわれてしまいました。

 そして自宅内隔離。
7度2〜3分の熱と痰・咳との戦いでしたが、でもこの程度の症状なら若い頃、何度か経験していたのではないかと思わされました。

 そもそも「インフルエンザ」なる病名は、私達世代にとっては最近言われ出したという感覚しかなく、昔はほとんど「風邪」の一言で片付けられていたように思います。
そして熱い風呂に入り、布団を被って一汗かけば、「抜ける!」という自信がありました。
若かったのでしょうか、それとも最近、病気が複雑化したのでしょうか。
私には未だに「風邪」と「インフルエンザ」の違いも、「ウイルス」の何たるかも分かっていません。

 「室内の湿度は50パーセント程度に保って、時々お茶を飲むようにするといいですよ」と医者からアドバイスを受けました。

 (そうかぁ、やっぱり加湿器は必要か・・・・)と、面倒なので使っていなかった加湿器のことを考えていると、ふとある絵が浮かび上がりました。

 それは幼い頃、まだあちこちの家の茶の間に置かれていた「長火鉢」の絵でした。
赤い炭火に薬缶がのせられ、煮えたぎる湯がちんちん蓋を押し上げ、白い湯気が立っていましたっけ。

 (そうか!あれが昔の加湿器だったんだ)と我ながら納得してしまいました。

 しかもその長火鉢の脇には、茶筒・急須・湯のみが置かれていて、年寄りが炭火にあたりながら茶をすすっていました。
その「茶」が、風邪・インフルエンザに良いと最近言われ出したのだそうです。

 (風邪だのインフルエンザだの詳しく分からずとも、昔の人は自然のうちに予防策を講じていたんだなぁ・・・・)と、また改めて感心させられてしまいました。

 それにしましても、酷寒といい豪雪といいインフルエンザといい、年々、激しさ・厳しさが増していないでしょうか。
もし自然環境に何らかの影響、例えば「温暖化」が進んでいるとなると、これは放っておけない大問題なのですが・・・・・・・

 「ごめんなさい。ご迷惑をおかけしました。」
そう言って仕事場に戻ると、ほとんどの人が笑顔で迎え入れてくれました。

 そしてその笑顔の意味には、「元気になって良かったですね」ともう一つ、「あなたもやっちまったんですね!」と言いたげな共感的笑みがあると感じました。

 「インフルエンザ」とは、いくら気をつけていても、誰でも罹る可能性がある点において、共感的笑みを誘うもののようです。

      テレビ屋  関口 宏