さて、「迷える世界」の年明けです。
混沌のシリア、難民流出、ヨーロッパの右傾化、イギリスのEU離脱、IS・テロの脅威・・・・・そしてトランプ体勢のアメリカ始動。
この複雑に絡み合った現実から、果たしてどんな結果が待ち受けているのでしょうか。
我がメディアの世界も例外ではありません。
「利害」「得失」が複雑に絡み合った状況から、今年は何が炙り出されてくるのか、まったく見当もつきません。
暮れに、出鱈目な健康情報等を流したとして問題となった、ネットのフェイクニュース(虚偽情報)。
この類いはますます氾濫するでしょうし、速くて便利なSNS系の「負」の側面が、社会を引っ掻き回さなければ良いがと、老婆(爺)心は安まりません。
テレビの世界もまた、変化し続けることを受け入れざるをえないのでしょうか。
「Netflix」等の参入により多チャンネル化がさらに進み、長年、栄華を誇ってきたキー局(東京ではNHKをはじめ、TBS、NTV、テレ朝、フジテレビ、テレビ東京)は、ますます苦戦を強いられるものと思われます。
そして、私の知る「良きテレビ時代」は、徐々に、徐々に、過去のものになりつつあるのです。
それに気づく度、「あーぁ、壊されて行く・・・・・」と、心が叫んでいます。
停まることも、元に戻る事もできない無常の世。それを知りながらも、ため息をついてしまうところまで来てしまったのでしょうか。
そんな折、「良き時代」を思い出そうとするかのような誘いを受けました。
『東京フレンドパーク』
24年前に始まり、6年前に幕を下ろしたTBSのバラエティ番組でしたが、正月に再現しょうと意気込む昔の仲間達に引っぱられ、実現されたのです。
(放送は1月9日。それ以降にこのコラムをお読みの方には失礼します)
内容は、申し分ないものになったのではないかと思われます。
ドラマの主役級の俳優さんが12人という豪華なゲスト陣、そして渡辺副支配人・ホンジャマカなど懐かしい従業員達、そしてカメラさん、照明さん,大道具さんなど、スタッフにも懐かしい仲間が集まり、まるで同窓会の中で収録しているような雰囲気になりました。
私も忘れかけていたものを、思い出し、思い出しつつ進行しましたが、忘れていること自体が笑いに繋がったりして、4時間ほどの収録があっと言う間に過ぎました。
そして
「・・・・ア・リ・ガ・ト・ウ・・・・・」
これが収録直後の実感でした。
それは今回の再現に挑戦した昔の仲間達への想いであり、さらには私が愛した、あの「良きテレビ時代」への感謝であったと思います。
あの時代だったから『東京フレンドパーク』は生まれ、あの時代だったから18年も続いた・・・・・・・
ではあの時代とはどんな時代だったのか。
それは、そう簡単には説明できないのですが,少なくとも言える事は、今よりも世の中に、のんびり・ゆったり、といった感覚がまだ残っていたように思うのです。
「まぁ、そのうちに」とか「なんとかなるだろう」とか、答えを急がなくても許されていたような空気が漂っていた時代だったのです。
では「今」という時代はどうか。
あらゆるもののスピードが加速して、すぐに答えを出さなければならないものに、何時の間にか私達は囲い込まれてしまったのではないでしょうか。
経済の決算然り、我が業界の視聴率然り、ネットのユーザー調査然り。
身近なものではメールの返信ですら、どこか「せっつかれている」ような気持ちになるのは私だけではないでしょう。
そんな時代の影響を受けた事件が起こる度、私の中に「疑問符」が増え続けているのですが、このスピードは誰にも止められないのでしょうね。
テレビ屋 関口 宏