VRメモ (仮想現実) 2 -MWC16

Kazu Shimura

Kazu Shimura

志村一隆

 バルセロナで毎年開催されるモバイル・ワールド・コングレス(MWC)の2日目。今日もVR(仮想現実)について話を聞いてきた。メモその1はコチラ。その0はコチラ

 まず、VR担当者が集まるセッションから。このセッションには「Jaunt」といういま自分が好きな制作会社の一つが登壇するので是非見たかった。彼らは自分たちのコンテンツのことを「Cinematic VR」と言っている。他社のVR作品と比べると少し凝っていていい感じである。彼らのコンテンツはココから見られる。ちなみにもう一つ好きなVR制作会社はVrse。

 Jauntはあのポール・マッカトニー卿や、ディズニー、英国衛星放送のSky、ドイツAxel Springerなどメディア企業から約120億円の投資を受けている。なので、お金をかけたコンテンツを作れるんだろう。ポール・マッカートニーのライブもVRで撮影しているし。VR360

 登壇していたもう一社「Immersive Media」もテレビ局と関係が深い。米国大手テレビ局ABCのモーニングショー「Good Morning America」のVR動画を制作してる。作品はココから。(アカウントを作成しログインして見る)ボクシングの試合も見られる。

 CONANやサタデーナイトライブも360度VR動画があるのをみると、アメリカのテレビ番組も頭が柔らかくなったんだろうか。VRの取組みはインターネット動画黎明期と比べてとても早く、数も多い。ちなみに、Immersive Mediaは先月120億円(噂)で買収されている。ワオ。

 セッションの会場は200人くらい入るだろうか。満席だった。会場の誰かが言っていたが、みんな「VRゴールドラッシュ」に乗り遅れたくないらしい。JauntやImmersive Mediaへの投資金額を見ると、なんだか盛り上がっているのは確かだろう。

 ただVRをどう使うのか、誰もわかっていないのが現状である。ブランド認知のための広告に使われたり、Jauntのように出資先から制作を請け負うなんてのがせいぜいだろうか。当然ながら、それだけではコンサル会社や広告代理店がクライアントを説得するための飛び道具的な商材、一過性ブームで終わってしまう。特に日本に入ってくるときに、「なんとか元年」なんて呼ばれてそのまま終了となってしまったら残念だ(悲)。

 

安くなるVR機器

 

フランスHomido社Co-FounderのRaphael Seghier 氏

フランスHomido社Co-FounderのRaphael Seghier 氏

 VRが映像のイノベーションになるためには、やはり一般の人たちが面白いと思ってくれないとなにも始まらない。そのためにもVR機器が身近に手に入ると嬉しい。前回紹介したグーグルのCardboard戦略もそうだし、サムスンも新製品スマートフォンG7にVR機器を無料で付けて販売するとの噂。いい傾向。

 フランスのベンチャー企業Homido社も格安の簡易型VRメガネを出している。写真のようにスマートフォンに挟んで使う。ポケットにいれられるので、電車の中でゲームをする(なんてのは恥ずかしいか)ときに便利そう。15ドル(1,300円)普通のヘッドセットはいま69ドル。現在は米国市場に力を入れているが、すでに日本からも販売したいという引き合いが某通信キャリアから来ているとのこと。同社のRaphael Seghier氏は、これからのVR市場発展には、「コンテンツ、視聴機器の改善と普及」の2点が重要であり、「欧米では360度映像とゲーム、中国ではゲームより映像コンテンツが重要だろう」と言っていた。

 360度映像を撮影するカメラも低価格なものが出ている。フランスGiroptic社のものはレンズ3個で360度撮影、そのまま編集される。その動画をYouTubeにアップすれば、自分の撮ったVR動画が楽しめる。499ドル(約60,000円)。まだ高いか。

 やはり自分で撮影して楽しむというより、まずはVRゲームがVR市場を拡大するんだろうか。セッションではVRは映像革命の始まりに過ぎないなんてことを言っていた。

(情報)Giropric社は今月25日-28日まで横浜で開催される「CP+2016」に出展するとのこと。自分はこのイベントを知らなかったが、CPとはCamera&Photoのことらしく、360度映像を撮影できる製品がたくさん出品されるらしい。

 

Homido mini VRグラス

スマートフォンに挟むだけでVR動画が楽しめる(フランス Homido社製)

Giroptics社の360 Cam

Giroptic社の360 Cam