ニッポン、面白かった!

H.Sekiguchi

関口 宏

 2年にわたって47都道府県を紹介して来たBS-TBS『ニッポン風土記』が無事終了しました。
東京以外それほど詳しくない私に、地方の面白い話を沢山聞かせていただき、誠にありがとうございました。

 「日本人」という共通の大きな括りはあるものの、この小さな島国の中で色とりどりの文化が大切に保たれている現状は、面白くもあり不思議にさえ感じられました。
普通、小さな「国」では、文化もほぼ均一化されて行ってしまうそうですが、周囲が海に囲まれ、陸地では高い山々が垣根のような効果を生んだのでしょうか、同じ県でありながら文化がまるで違うところが方々にありました。

 典型的なところは「青森県」。日本海側の「津軽地方」と太平洋側の「南部地方」では、全く違う県ではないかと思わされるほどでした。

 そもそも県境なるものは明治維新以降、国の都合で人為的に引かれたもの。
その後何度も線を引き直したところもありますが、あちこちにまだ無理があるとも感じさせられました。

『ニッポン風土記』 BS-TBS 
2016年10月〜2018年9月まで放送

 またその線一本で揉め事が起こることもあります。富士山をめぐる「静岡県」と「山梨県」の争奪戦。現在、富士山頂には県境が引かれていません。

 そしてこの番組で度々話題になったのが都道府県別「好感度調査」。
北海道・東京・京都が上位を占めるものですが、下位にランクされた地域の人々の嘆きには同情しながらも、つい笑いに誘い込まれてしまいました。

 例えば「茨城」「群馬」「栃木」の最下位脱出争い、北陸三県・「富山」「石川」「福井」の似た者同士の個性の強調合戦・・・・・どれも「我が故郷・お国自慢」のなせる結果です。

 「京都」「大阪」「神戸」のいわゆる三都の比較も興味深いものがありました。
東京の人間はこの三都を「関西」と思いがちですが、自ら「関西人」と自負するのは「大阪の人」で、「神戸の人」は「関西ですが神戸です」と言いたくなり、「京都の人」に至っては「関西?・・・・・いいえ、京都どす!」と断言するのです。
しかもこの「京都の人」はいまだに日本の首都は「東京」ではなく「京都」だと、潜在意識の何処かで思っている節が伺えて、「先の大戦は?」の問いに「応仁の乱」と答えるという笑い話も、満更冗談でもなさそうです。

 しかし考えてみれば人間というものは誰しも、生まれ育った「土地」に根付いている価値観を自然に受け入れて、「自分」という存在を作り上げていくのだと思われます。私も京都に生まれていれば古い都を誇りにしたでしょうし、極寒の雪国に生まれたならば、もっと辛抱強い人間になっていたのかもしれません。
「自分」というものの正体を確かめる上で、生まれ育った「土地」に根付く価値観に、強弱はあるにしても、どこか左右されている部分があることは無視できないと思いました。

 そしてこの番組ではその都度、ご当地の「民謡」もご紹介してきました。
若い頃はどれも同じようなものとしか捉えていなかった「民謡」も、説明を聞きじっくり味わってみると、その土地その土地の息遣いが感じられ、これは是非とも残していってほしいと思いました。
また「方言」もそうです。一言一言にその土地が育んだ文化が秘められていて、味わい深い言葉が沢山ありました。

 しかしこれらも時代の流れやテレビ・ラジオ・ネット等で、日本全国を均一化してしまう恐れがあります。せっかく培ってきた日本の文化です。みんなで大切にして行ってもらいたいと切に願いながら番組を締めました。

 そして10月からは『人生の詩2』がスタートします。
1回目のゲストは小泉純一郎元総理。反原発の話やらここまでの人生観など交えながら、楽しい出会いになればと期待しています。

『人生の詩2』  毎週土曜日・昼12時・BS–TBSにて

テレビ屋  関口 宏