バーチャルリアリティ市場規模やプレイヤー -なんとかリアリティ

Kazu Shimura

Kazu Shimura

志村一隆

 ショーンKさんや詐欺セレブ”ばびろんまつこ”は仮想の自分を作って生きていた。タレントが売るイメージだって仮想の姿。画像加工した化粧品のポスターだって仮想だろう。こうした仮想は記号化され消費されると言ったのはボードリヤールだったか。キヨハラは記号化された仮想自分に押し潰されたのだ。

 他人に消費されない仮想自分を作る人もいる。とある社長は、仕事で悩むと、仮想の自分が頭の上に現れ、悩み相談に乗ってくれるそうだ。この前話したアニヲタ女子大生は「現実を忘れる」ために2次元なアニメにハマる。毎週金曜深夜知り合いの女性は「クリミナルマインド」を見続ける。この世知辛い世の中で、救いはアナザーワールドにあるのか。そんな方に、ドラッグも想像力も必要ないデジタルなリアリティ、それがVR=仮想現実である。

 いや「仮想」な現実だけなく、ほかにも「拡張現実」「複合現実」などなど。いろいろな「現実」を見せてくれる技術が氾濫している。とりあえずまとめてみると。。ホントの「現実」に情報を付け足すのをARやMRと呼び、「現実」と隔離すべく専用機器を顔につけて楽しむのをVRと呼んでいる。ARやMRは仕事や情報などの実利のある情報を提示する方向性にあり、 VRはゲームや映像作品といったコンテンツの発表プラットフォームとして用いられる。(簡単な市場構造図などは、2016年1月号「ハマる仮想現実」を参照)

VR、ARそれにMR

VR、AR、MRのまとめ:映画を教えてくれたのは独立メディア塾に寄稿してくれている森下暁氏。

ちなみに、下記動画は、Googleが600億円以上投資した”Magic Laep”社のAR動画。楽しそー。

 これ以外にも、マイクロソフトはARグラス”Hololens“を開発中。この3月30日にとりあえず試験モデルを発売してる。2014年9月に買収した”MineCraft”やゲームコンソールの”XBox”と連動させて欲しい。また、この動画のようなHoloportationも開発中。映画「スターウォーズ」のレイア姫のようなシーンを思い出すが、冒頭の社長のようなもう一人の自分を映し出すことができるんだろうか。いやAI(人工知能)と組み合わせればできそうな気がする。

 こうしたVR/AR市場がどのくらい伸びるのか?海外の調査会社が市場予測を出している。ちょっと大げさな気もする。3年前にある調査会社が出した2018年の市場規模はわずかに1,200億円程度だった。

VR/AR市場規模

VR/AR市場規模

 

 次にプレイヤーの動向をまとめてみる。欧米メディアは昨年から今年にかけてVR/ARベンチャー企業に出資し終わっている。VRコンテンツの制作会社Jaunt社は100億円も各社から投資を受けている。それだけ盛り上がっている。

IT企業のVR/AR取り組み

IT企業のVR/ARの取り組み

 

欧米メディア企業のVR/ARへの取り組み

欧米メディア企業のVR/ARへの取り組み

 最後に、米国HuluがVR対応を始めている。(Hulu Tech Blog 2016年3月24日)下の動画は米国ユーザーがYouTubeに公開しているもの。”Hulu VR”のスクリーンには、TV、映画とVRが並列して表示されている。

 昨年出した著書「群像の時代」で、「テレビと視聴者の距離3メートルの間にたくさんのメディアが入り込んだ」と書いた。VRはさらに一歩踏み込み、史上一番カラダに近いメディアである。VR空間ではメディアはプライベート化してしまうのだろうか。情報を記号化するメディアの機能はVR 空間では働かないだろう。情報を消費するという行動はなくなるのかもしれない。そのとき広告はどうなるのか?メディア表現はどうなるのか?40年前ダニエル・ベルは、「芸術は参加するものになった」と言った。VRやARはその究極のカタチなのか。仮想とリアルのカオス状態「なんとかリアリティ」が表現にもたらす変化は、メディア論としてとても面白いテーマである。

テレビは3メートル、スマホは30センチ、VRは3センチのメディア

テレビは3メートル、スマホは30センチ、VRは3センチのメディア

 

(参考)

  1. キャノンのMRテクノロジー
  2. 川重テクノロジーズのMR紹介
  3. Zeiss社のARグラス