ミッキーとみんなの物語 – CES2016から

Kazu Shimura

Kazu Shimura

志村一隆

 毎年1月に米国で開かれる家電見本市CES2016話の続き。ラスベガスに向かう途中、デンバーの飛行場で「スターウォーズ」に出てくるBB-8というロボットのオモチャを売っていた。これがとにかくカワユいのだが1万8千円もする。ので諦めている。

 それはともかく、自分はこれを見て、人気キャラクターとお金があれば、デジタル技術を使って自在に儲けられるんだなと思った。

 

 

プロとアマの境目が曖昧に

 

 世界中のメディア企業は人気テレビ番組をDVDにしてまた儲けるビジネス手法で、この30年成長してきた。ところが、インターネットでは儲けられなかった。たとえばディズニーのインタラクティブ部門が黒字化したのは2014年度からである。

 それどころか、本来の商売にも影響を与えている。CESに登場したNBCのSteve Burk CEOは「Netflixなどのインターネット配信は視聴率に少し影響している」と言っていた。

Steve Burks 手をこまねいてるうちに、自撮りやゲーム実況、セルフパブリッシング、マッシュアップなどなどプロとアマチュアの境目もどこにあるのかわからなくなってくるし、Netflixは自前のドラマを大量に作り出している。

 なんだかセブンイレブンが美味しいスイーツやコーヒーを次々と売り出し、美人料理家がたくさん出てくるFood業界と一緒である。そんなビジネス環境でプロのメーカーはどうすればいいのか?某食品メーカー勤務のO田さんは「我々は流行ってるお店に飲料を売ればいい。武器商人と同じです」なんてことを言う。

 つまり、このゴチャゴチャした時代に、失敗するかもしれない消費者向けビジネスをする必要はない。どのお店もビールやジュースは必要なんだから、その期待に応えればいいということだった。ドトールがコーヒー豆をセブンに卸せばいいのと同じか。

 

ディズニー – Story telling company

 

 それを聞いて、メディア業界でも同じことをしてる企業がいるなぁと思いだした。たくさんの人気キャラクターを映画やゲーム、アニメなどで変幻自在に活躍させるディズニーである。ディズニーは映画やテレビドラマ制作をしながら、MARVELやスターウォーズといった知名度のあるキャラクター群を買収している。人気キャラクターを集めれば、あとは勧善懲悪かラブストーリーか定番の物語を作ればいいのである。新作映画よりリスク低い。Disney

 CESでディズニーのデジタル部門幹部が言っていた。「ディズニーはStory telling companyである」

 なかなか印象的な言葉。こんな意味だろうか。

 「映画を見たい!」「ゲームをしたい」という欲求は「物語」を楽しみたいってとこに行き着く。つまり、映画やテレビそれにディズニーランドなどなど表現形式は違えど、結局コンテンツ制作者が提供するのは「Story=物語」である。

 「読者の気分に合わせた物語を提供するのが編集者の仕事」と言った編集者がいたが、泣きたいときには悲しい小説、笑いたいときは喜劇と読者に提示し続けるのが出版社の使命であるみたいなことだろう。

 スマホで小説からゲーム、映画まですべて楽しめる時代が来るなんてことは、この人の念頭にはなかったかもしれない。しかし、いまなら同じページのなかに、映像とテキストを共存させることはなんら難しくない。悲しいときは映像で、今日は小説でと表現形式も瞬時に変えられる。

 

キャラクターと物語に分解されるフォーマット

 

Story そういえばオンラインメディアWIRED英国版にディズニー幹部の面白い(同じようなこと)インタビューが載っている(1)。曰く「コンテンツではなく、キャラクターとストーリーである」

 「コンテンツはメディアを規定し、メディアはユーザーを特定する」なんて聞いたことがあるが、冒頭のようなデジタルオモチャのように、テレビや映画よりも、キャラクターのほうがユーザーの気持ちを引き込むきっかけになるのではないか。映画やテレビといった決まったフォーマットをキャラクターと物語に分解し、再構築はユーザーに任せるのである。(この辺は、昨年ポット出版から出した「群像の時代」に章を割いて説明しているので参考にしてほしい)

 

世界観を守る製販一体型

 

 ディズニーは英国で自前の動画配信サービス「DisneyLife」を始めた。DisneyLifeはNetflixより2ポンドほど高い設定だが、単純な配信本数と値段のコスパで評価するのは間違っている。Netflixは完成品を販売するデパート。品数と買いやすさが勝負である。DisnelyLifeはキャラクターを使ってユーザーが物語を作る遊び場に発展していくだろう(推測だが。。)幕張イオンモールに自分でピザを作って食べるピッツアランドというお店があるが、そのコンテンツ版。要は「体験」が売り物である。

 そして、「体験」を売り物にしなければならないことに気づくと、製作から販売まで統一したブランド管理(世界観ともいう)も必要なことにさらに気づく。世界観は自分でコントロールしたい。アップルがアップルストアでMacを売るのと同じだ。

 家電はまちの専売電気屋さんから量販店に流通が移ってしまい安売り競争に巻き込まれてしまった。いっぽうセブンイレブンやNetflix、それにユニクロなど流通が製造を始めて成功するケースは増えている。いまメーカーで販売までコントロールするのはアップルくらいであろうか。いずれにせよ、メディアやコンテンツも体験型に変わるなら製販一体型が必要不可欠である。そんな意味でディズニーの試みに注目してる。

(オマケ1)
 冒頭のデジタルオモチャを作ったSphero社はディズニーのベンチャー企業支援プログラムに参加し、メンターとなったディズニー社ボブ・アイガーCEOに、「こういうものを作れるか?」とスターウォーズのBB-8の写真を見せられ、スグ作ったものらしい。(2:The Denver Post)

(オマケ2)
 いままで大手メディアは自社のユーザー数を増やすことしかインターネットに求めてなかった。最近は量より質、ネットならではの視点を求める方向に変わってる。昨年ネットメディアBuzzfeedとViceに出資したNBCも、以前なら広告売上の増大を期待するなんてコメントばかり聞かれそうだが今回はちょっと違う。

 Burks CEOは「今年のリオ五輪にBuzzfeedスタッフが取材に行く。彼らはスポーツの取材も中継もした経験がないだろうが、そんな彼らの視点は新鮮で新しいコンテンツを作りだすだろう」と言っていた。

 なんか新たな視点・コンテンツを欲していることがわかる。潮目が変わったか。

(参考)

  1. Matt Kamen, “DisneyLife aim to be Disney’s all-in-one streaming platform”, WIRED UK 2016.01.16
  2. Tamara Chuang, “How Boulder’s Sphero brought Star Wars BB-8 droid life as toy”, The Denver Post 2015.09.03