『 第1位 』

H.Sekiguchi

H.Sekiguchi

関口 宏

「今週の第1位!・・・・・」なんて言われると、つい、「何なんだ?」と気をとられてしまうのは私ばかりではないでしょう。

 「ベスト10」だの「ベスト3」の呼びかけには、「知っておこう」とする不思議な意識が働くことを利用する「ランキング」が大流行り。

 我がテレビ屋業界では、視聴者のチャンネル替えを防ぐ(掴んだら離さない)テクニックとして昔から使われてきた手法で、大方、第10位から9位8位と進めて、ベストスリーの手前で「コマーシャル」。
そして第3位、第2位ときて、最も興味をそそる第1位に行くかと思いきや、残念ながらまた「コマーシャル」。これがその手口になっています。スミマセン。

 しかし「ランキング」とはつまり、何かの数値の順位であったり、ひとの意見の多い少ないの順位であるわけで、ゆえに何を基準にしたものなのか、いつ・どこで・誰に聞いた結果なのか等の裏付けが大事なのですが、ものによっては、その辺りがアヤフヤで、「ホントか?自分達の都合で決めてるんじゃないの?」と疑いたくなるようなものも横行しているようです。

 犬猫の名前ランキングとか、人気朝飯ランキングのような他愛のないものならまだしも、報道情報系の番組となると、やや老爺心が騒ぎます。

 

ニュースランキングサイト

 報道情報系の番組であっても、視聴率を問われる厳しい状況の中、掴んだら離さない手法として「ニュース関心度ランキング」を扱う番組もあるのですが、人々の関心事を知る上では役立つ面もありながら、一方では、人々がまだ知らない重要な情報を知らせるメディアの大切なお役目が、ないがしろになってしまわないかとの心配なのです。

 

 テレビに限りません。今、ネット・スマホの世界でも似たような現象が起こっているようです。

 つまり、起きた出来事をいち早く伝えるSNSの利点に加えて、ユーザーのヒット数の多い少ないによって、絶えずニュースの順位が入れ替わるサービスがついているものもあって、それは人々の関心事を知る興味には沿うようでいて、メディアの使命として、ユーザーがまだ知らない重要なニュースが、軽んじられてしまう傾向に走る心配があるのです。

 それでなくても、新聞を読まない若者が増えているご時世。(テレビも持たない若者も多いそうで、テレビ屋としては忸怩たる想いにもなるのですが・・・・・)

 結局、若者達はネット、スマホですべて間に合わせているということなのでしょうが、確かに情報は早い、それで何か世の中が分かったような気にもなる・・・・・・。
しかし、「それで本当にいいのかな?」の老爺心の登場です。

 そうしたSNSどっぷりの若者達に聞くと、ネット・スマホでは、どうしても自分の関心事,興味のあるニュースしか見ない傾向に走りがちになるというのです。
これは大きな問題です。由々しき事態です。

 

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 そこへ行くと新聞は、紙面を広げれば大きい記事、中位の記事、小さな記事が一気に目に飛び込んできます。
その大・中・小によってそれぞれのニュースの軽重が計れますし、新聞社によってはその軽重が違っている場合もありますが、それはそれ、その新聞社が何を大切にし、何を無視しようとしているのかが伝わる面白さもあります。

 

 また新聞では、自分には興味がなかったり、知らなかった出来事にも、「一応目を通しておくか」ということにもなり、それが後々役に立つこともあるのです。

 「だから新聞を読め!」と申しているのではないのです。
時代の流れはどうしても新聞離れ、テレビ離れになるのでしょう。
残念ながらこの流れを止める事はできそうもありません。

 だとすれば、勢いを増すSNS系の方々へのお願いとして、是非とも、「ランキングニュース」ばかりではなく、たとえヒット数が少なかろうと、ユーザーにとって、大切と思われる情報を届ける智慧と工夫に努力していただきたいと思うのです。

 視聴者・ユーザーが見たがっている情報を与えるだけでなく、知らせなければならない情報に重きをおくメディアへの成長を願っています。

 ところで思い出しました。
昔々、「ある!ある!ある!」と歓声がとぶ、データーを元にしたランキングクイズがありましたね。
「クイズ・100人に聞きました」と称しておりましたが・・・・・

あれからもう、23年の歳月が流れました。

テレビ屋  関口 宏