予測不能の時代

H.Sekiguchi

関口 宏
 さて、2019年。今年はどんな年になるのでしょうか。
 
 まず日本では元号が変わります。「昭和」は天皇崩御に伴い「平成」になりましたが、今回は天皇退位による元号改変。それは自動的に行われる事のように受け取られるかもしれませんが、私には、この時期の世の中の状況に符合しているように思えてなりません。
 
 「平成」の約30年間は何だったのか。もうすでにその総括が様々な形で報じられていますが、「昭和」の終わりとほぼ同時にバブル経済崩壊が始まり、その清算に追われ続けた「平成」。あの手この手の経済政策も打たれ、アベノミクス・三本の矢もその流れだったようですが、その効果の程はどうだったのか。気がつけば国の借金は1千兆円を超えてしまいました。「平成」は「昭和」のツケ払いに明け暮れた時代であり、そのツケはまだ終わらぬまま新時代に突入します。
 

Youtube朝日新聞社チャンネル
※YouTubeサイトでご覧ください。

 
 そしてもう一つ。「平成」は新テクノロジーとの格闘でした。パソコン・携帯ですらほとんど見かけなかった「平成」の始まり。それがコンピュータの長足の進歩が世の中を変えてしまいましたし、その行く先はまだまだ予測不可能です。便利さと弊害、そして悪用が交錯する中、日本に限らず世界中が、次々登場する機械に振り回されているような感じがします。
 
 この経済とテクノロジー、二つの要素を二本のレールに例えて、「サンデーモーニング」では1月6日の放送で様々なご意見を伺おうと準備しています。(それ以降に、このコラムをお読みの方には申し訳ありません)
 
 一方、世界に目を向ければ、トランプ現象の更なる硬化。米中・米露・米朝ばかりでなく、サウジ・イラン・イスラエル・パレスチナ・シリア・トルコ・・・・もう世界中に混乱の種がまかれています。
 

 
 またこれもトランプ現象の影響を受けているのかどうか私には判りませんが、ヨーロッパも益々混乱の度を深めています。ブレグジットのイギリスはじめ、イタリア・スペイン・フランス・ドイツまで不安定な状況に置かれています。
 
 そして我が日本。昨年の1月のこのコラムに、この一年、日本の独自外交を期待するコメントを載せましたが果たしてどうだったか。日米・日露・日中・日韓・日朝・・・・・難問山積。その分析は専門家に任せるとしても、どうもピリッとしないと感じるのは私だけでしょうか。
 
 更には大きな大きな環境問題。「平成」は東北大震災をはじめ、自然が猛威を振るった時代でもありました。それに伴い起こった原発事故も、いつか(喉元過ぎれば・・・・・)の状況になりつつあるようですし、寒さ暑さも、雨も風もその激しさを増しているように感じます。地球温暖化が原因ではと言われながらも、それを否定し続ける国もあり、地球の全体像から考えれば、一向に改善されているようには見えません。「温暖化による気象変動は極端化して現れる」と一部の専門家が指摘してきた通りになってきているように思われるのですが・・・・・。
 
 と、私達を取り巻く世界は難題だらけ。そこに情報テクノロジーが良くも悪くも関与してくる時代。それらを全て見通し、近未来の人類の姿を予見できる人がいるのか、甚だ心細い気持ちになります。
 
 ただ、判りません。これまでの人類の価値観の何かが壊され、その先に新たな光明が見えて来るのかもしれません。その予測不能の時代に入った今年、我が国で元号が変わることは、何か意味があるのかもしれないと思う2019年の幕開けなのです。
 
     テレビ屋  関口 宏