ライバルはアンドロイド! −とあるニュースキャスターのつぶやき−

Rika Wakebayashi

Rika Wakebayashi

 分林 里佳

 

 最近、高齢化社会などを背景にロボットの活用に注目が集まっています。
今年6月に政府が発表した「日本再興戦略」に盛り込むなど、政府主導で市場の拡大が進むとみられていて、株式市場でもロボット関連のIPOが話題になったり、ロボット関連銘柄が賑わったりしています。

 

キャスターもロボットに?

 

 そんなニュースを取り上げると「キャスターもそのうちロボットになるんじゃないの?絶対噛まないし。」といった冗談が聞こえてきます。

 

 また、「2030年あなたの仕事がなくなる」「ロボット社会到来間近」「2025年人間とロボットが共存する社会にむけて」…といった記事を目にするたび、どこかまだリアリティに欠けるSF世界をみる感覚でいました。

 

 しかし考えてみれば、これまでコンピューター技術が進歩したことで人間にしかできないと思われていた仕事が、次々とコンピューターに置き換えられています。ロボットが人間にしか出来ないと思われている仕事をこなす日も、そう遠くないのかもしれません。

 

 実はすでに、日本科学未来館では“コドモロイド”というアンドロイドアナウンサーが公開されています。人間そっくりの表情でニュースや天気予報を読み上げ、愛想がよくユーモアのセンスもあって、もちろん噛まないですし外国語にも対応しているとか。

 

コドモロイド

コドモロイド

 

共感 – ロボットにできないこと

 

 私はよく友人から「見えない敵と戦っている!」とか「あさっての方を向いて頑張っている!」と言われますが、このアンドロイドアナウンサーを見て、いよいよ私の存在も脅かされてきたと不安になり、その対抗策を考えています。
(私の存在価値は? アンドロイドではなく、人間にしか出来ない事。人間らしさの本質は?人間らしさ、私らしさとは・・・・・。)

 

 例えば、ニュース等で緊急地震速報を伝える際、これまでは視聴者に冷静な行動を促すため努めてゆっくり落ち着いたトーンでアナウンスしていました。しかし、東日本大震災のあとNHKなどは、避難をいち早く呼びかけるために、あえて語気を強め切迫感のある断定的な表現を使っています。また「東日本大震災を思い出して下さい」という表現も加えられています。

 

 私は、アナウンサー自身も何らかの形で東日本大震災を経験している方が多いため、こうした呼びかけがより効果的になっていると思っています。

 

 同じ恐怖や悲しみを共有した“人”が伝えることで、「早く避難してください!」という情報に感情が伴い、さらに切迫感や緊急度をもって伝えることができるのではないでしょうか。

 

 “人”には他人の気持ちを理解したり共感したりする能力があり、それは脳の中の神経細胞「ミラーニューロン」(共感細胞)の働きが関係しているといわれています。

 

 このミラーニューロンは霊長類など高等動物にしか存在しないそうですが、解明されていない部分も多く、この能力をアンドロイドに装備させアップデートするのは未来になってもなかなか難しいのではと思います。

 

アンドロイドキャスターは実現するのか?

ロボットに感情は生まれるのか?

 

キャスター・伝え手でイノベーションを興す

 

 一方、ふだんよく見かける定型化されたテレビ番組で、決まりきったコメントやどこかで聞いたようなフレーズを話すことはアンドロイドにも可能です。「テレビを見ない!テレビが面白くない!」と言われて久しいですが、それは定型化されてしまった番組にも原因があるのでしょうか。

 

 そんな事を考えていると、私が担当している経済番組で、ある経済評論家の方がアメリカの産業革命について「機械化の進展が労働の効率化を引き起こし、アメリカ経済の成長がどんどん加速した」と言われました。そこで私が「機械化のおかげで仕事が減ると、景気に悪影響なのでは?」と聞くと「作業から解放された人はその分何か新しい事を考え、そこにイノベーションが生まれる!結果的には従来とは比較できないくらいの生産性や成長につながるのだ。」と解説されました。

 

 なるほど!!ロボットにできることはどんどん任せて、私は人間として、キャスター・伝え手という分野にイノベーションを起こせばいいのか!

 

コドモロイド

コドモロイド

 

アンドロイドを保有する未来のキャスター

 

 まずは…

 

 キャスターが自分の見た目そっくりのアンドロイドを所有し、これまでの知識や経験を入力、アップデートします。それをアンドロイドから発信し、アンドロイドは受け手とコミュニケーションする1つのツールになっていく。蓄積された情報のやり取りをコミュニケーションと呼ぶなら、情報が増えればそれだけやり取りの組み合わせが増えます。そして、組み合わせによって結果の良し悪しが生まれるでしょう。それは「感情」といえるかもしれません。

 

 つまり、難しいと言われている「ミラーニューロン」(共感細胞)の装備も夢ではないかもしれません。もちろん、喜怒哀楽が生まれたら、良からぬことも起こりかねませんが。。

 

 ただ、その相手の喜怒哀楽に寄り添う機能(心)を“アンドロイドキャスター”に持たせることができたなら、“より伝えられるキャスター”に近づける事ができるでしょう。

 

 「そうなれば、私はそんなアンドロイドキャスターをマネジメントすればいい。何台か所有すれば同時に仕事をすることもできるし、衣装やメイク代が浮く・・・どうせなら、少々高くても5カ国語くらい話せるハイスペックなものにしよう。」
「でも、そういう場合、アンドロイドの購入費用は減価償却できるのかな?メンテナンスなど維持費はどれくらいかかるのかな?」

 

 人とロボットが共演なんてことになったら、きっと翻弄されるのでしょうけど、それも一つのショーとして面白いかもしれません。そして人しか出ていない番組は「逆に新しい」といったニーズを私は拾っていくことになるのでしょうか…
などと、これまたあさっての方を向いて様々な思考を巡らせているのです。