志村一隆
毎年1月に米国で開かれる家電見本市CES2016話の続き。前回話したVR(仮想現実)の次に驚いたのがドローンだった。ドローンを最初にみたのは2010年。フランスParrot社製で、大きな発泡スチール製の外枠のなかに4つの羽根が回っていた。(動画はコチラ)目の高さを浮遊してるだけで、まだフーンという感じだった。その4年後、中国のDJI社が小型でスマホやカメラが搭載できるタイプを出し、おー凄い!と思った。
それでも、ドローンといえばParrot社とDJI社の2社くらいだったのが、今年は欧米やアジア各国のベンチャー企業がたくさんいろいろな種類を出していて、随分と賑やかである。
人が乗れるほど大型のもの(中国Ehang社製)もあったし、カメラ搭載可能はもはや当たり前。今年は人を追跡したり、障害物を自動で避けるセンサー・人工知能と結びついたのが進化だろうか。
実生活で見知らぬ飛行物体が飛んできて自分から離れなかったら、なんだか不気味。ただバッテリーがスグ切れたり、それに実際に飛んでるドローンはかなり騒々しい。だから、密かな尾行はまだ無理かもしれない。子供の登下校を見守るのならアリかも。値段は大体5万円以上するけれど。
トイドローン
そんななかで、自分が面白いと思ったのが、オモチャのような小さなドローンである。トイドローンとでもいうべきか。
韓国の「BYROBOT」社のPet Droneは手の平サイズでとても軽い。この軽さがポイントである。というのもドローンは規制が強化され、利用前に登録が必要となっている。しかし、軽いと規制に引っかからない。つまり登録しなくても遊べる。米国は250グラム未満。日本は200グラム未満。
Pet Droneは3つのドローンで空中戦ができるらしい。いや、実際できるまでにはかなりの修練が必要そうだが。自分も6,000円くらいのミニドローンを操作したがあるが、なかなか難しい。もちろん面白いけれど。
遊びで楽しんでるうちはいいが、そのうち昆虫型ドローンが編隊を組んで、国境を荒らすなんてことも考えられる。爆弾を積めなくても、毒ガスといった軽いものを運べれば充分である。空爆といったマッチョな戦いでもない。もしAIで動くドローンであれば、殺戮に対し人間は痛みをもはや感じないのではないか。(参考:君和田塾長 2014年2月「空爆がいきつくところ」)
これからの軍事戦略は、こうしたサイバーやミニドローンといった目に見えないものへの対応が大切なんだろう。(参考:2015年2月「サイバーテロ – 透明性と匿名性 -」)
ところでドローンはなぜ4つプロペラ(羽根)があるもの(クワッドコプターと呼ぶらしい)ばかりなのか?ずっと不思議だった。いい機会なのでちょっと調べてみると(といってもWikiだが)、4つあると、短く・小さな羽根でも推力や揚力が得やすいらしい。ヘリコプターには機体の上に大きな羽根と後ろに小さな羽根が付いている。大きな羽根は揚力を得るためで、後ろの羽根は推進力や舵取りの役目をしているらしいのだが、ドローンはそれを4つで分散している。
ただ羽根が増えれば、それを動かすモーターも増える。その重さで高く飛べなかったり、羽根の操作が複雑になったりして、なかなか実用化されなかった。1900年代に最初のクワッドコプターが作られたあと投資が止まり、1950年代になって米国企業製が米軍に採用される。それでもがなかなか主流になれなかった技術のようだ。
それがいま、安くて軽くて高性能なモーターがでてきたおかげで高く飛べて遊べるドローンが出てきた。。と、ザッとみるとこういうことらしい。
ちなみに、世界初のクアッドコプターはフランスで作られた。あの高級時計のブレゲ一族が作ったもので、その後このブレゲ社は紆余曲折を経て航空機メーカーのダッソー(Dasuult)となっている。Parrot社がフランス発なのはこうした脈々と受け継がれる伝統があるんだろうか。フランスは航空産業に強いんか。航空って意味のAviationはフランス語だし。
ダッソーは「ル・フィガロ(Le Figaro)」という新聞社(発行部数30万部)を傘下に持っている。なんて、どんどん脱線してしまうので、この辺にしとこう。
ともかく日本では総理官邸に落ちて以来、「ドローン面白い!」的な空気感は消えてしまったが、CESに来てみてこんなに盛り上がってるの?と改めてそのギャップに感じいってしまった。
(下)Breguet Richet Gyroplane (1907)
(下)George De Bothezat Helicopter(1922)
参考: