あなたは誰のために「ワクチン接種」をしますか?

K.Shintani

進谷 憲亮

 「あなたは自分の子どもにワクチン接種をさせますか?」

 そう尋ねると誰もがイエスかノーで答えてくれることでしょう。

 では、「ワクチン接種について詳しく説明できますか?」と尋ねた場合はどうでしょう?

 僕も最近知りましたが、毎年4月24日から4月30日は世界予防接種週間なのだそうです。

 それに因んで、今回は少し「ワクチン接種」についてお話させて頂きたいと思います。

 

日本はワクチン接種の「後進国」?

 

 世界中で医療技術は目まぐるしい早さで進歩しています。

 ワクチン接種によって、毎年推計200万人から300万人の子ども達の命が守られています。1990年当時、世界で年間1270万人もの子ども達が5歳の誕生日を迎えることなく亡くなっていました。しかし、2013年にはその数も630万人にまで減りました。

 その一方で、毎年150万人以上の子ども達がワクチンで予防できる病気(Vaccine Preventable Diseases 以下VPD。いわゆる麻疹や風疹、水痘、日本脳炎や破傷風、インフルエンザなどの予防接種の対象となっている病気のこと。)に罹り、尊い命を落としています。

 その多くはワクチンが手に入らない発展途上国の子ども達です。先進国の多くは国策として予防接種事業を広め、子ども達の命を守ろうとしています。

 では、先進国である日本ではどうでしょうか。
 残念ながら他の先進国と比較して、ワクチン接種率が低いのが現状です。

 なぜ他と比べてワクチン接種実施が進まないのでしょうか。
 日本ではVPDの恐さやワクチン接種の有効性及び重要性について学ぶ機会がありません。

 その反面、インターネットなどではワクチンによる副反応などの有害事象のみ大々的に報道されます。僕はこのことが1つの原因となっているのではないかと思っています。

 

「集団免疫」という素晴らしい効果を知っていますか?

 

 VPDに感染してしまった場合、現時点で治療方法はありません。今でもVPDに罹り命を落とす子ども達や、重い後遺症に苦しむ子ども達がいます。だからこそ、「予防」が重要となります。「接種をしないこと」を選ぶことで子ども達に危険がふりかかる可能性があります。

 また、ワクチン接種には「集団免疫」という素晴らしい効果があります。
 簡単に言うと自分が接種することで、周りの人の感染も予防が出来るのです。
 VPDの原因である病原体はインフルエンザや麻疹など感染力が強いものが多いです。一度流行すれば社会問題となります。個人がワクチン接種を受けることで、その感染の拡大を抑えることができます。

 「集団免疫」について、身近なところでインフルエンザウイルスを例に挙げてみます。日本では、1960年代からおよそ30年間、学童へのインフルエンザワクチン集団接種に基づいた、インフルエンザ対策が実施されていました。

 その後、その対策は無意味であったという意見の流布に伴い、集団接種は中止となってしまいました。しかし、2001年に米国と日本の共同研究により以下のことが明らかとなりました。

 集団接種が行なわれていた1970年代、1980年代のインフルエンザにより死亡者数(超過死亡)を調査すると、1990年代に比べて大幅に低くなっており、集団接種前には米国の3-4倍であった死亡率が、米国と同程度まで低下していたのです。

 その後、1994年に集団接種が中止されてからは、再度、日本の超過死亡は上昇してしまいました。決して、学童への集団接種は無駄ではなかったのです。

 そして、最も驚くべきことは、インフルエンザによる死亡例のほとんどが高齢者であり、学童の集団接種により、高齢者の入院、死亡が大幅に抑えられていたのです。

 これこそが、「集団免疫」の最も重要な役割であり、元気な人がワクチンを接種することで、ワクチン接種ができない人や重症化しやすい人を感染から守ることに繋がるのです。

 生まれたばかりの赤ちゃんや何らかの理由で免疫力が低下している人は、ワクチンを接種出来ないことがあります。

 そして、感染をしてしまった際に重症化の危険が高いのもそういったワクチン接種が受けられない人たちです。

 

「ワクチン・ギャップの解消」と「定期接種(公費負担)化」

 

 「あなたは自分の子どもにワクチン接種をさせますか?」

 ワクチン接種を肯定するも否定するも個人の自由ですが、やはり正しく理解した上で判断することが重要だと思います。

 また、日本が未だにワクチン後進国である原因として「国民が学ぶ機会がないこと」の他に2点

 その1つはワクチン・ギャップ(先進諸国と比べてワクチンの種類が少ない事)とワクチンの定期接種化の遅れが挙げられます。

 WHOにより子どもが接種する最重要ワクチンの1つに位置づけられ、途上国でも無料での接種が推奨されるロタウイルスワクチン、そして、先進国での無料化を勧告しているおたふくかぜワクチン。

 これらは日本においては未だに任意接種(自費負担)です。

 徐々に国内で打てるワクチンの種類も増え、ワクチン・ギャップは解消されつつあります。2016年10月より乳幼児のB型肝炎ワクチンが定期接種となり、定期接種ができるワクチンも増えてきています。それでもまだ不十分であり、いち早くワクチン後進国を脱却するためにも、国民の皆様の正しい理解が重要となります。

 そして、もう1つは保健指導を行なう立場の医療者であっても、ワクチンについて正しく理解できていない人がいるということです。

 保健指導に携わる保健師や小児科、診療所などで勤務する医師・看護師でなければ、ワクチン接種に関わる機会はほとんどありません。そのため、医療者であったとしても、自ら興味を持って学ぼうとしない限り、ワクチンに関する理解に乏しいのが現状です。

 しかし、医師・看護師に限らず医療者からの情報はどんなものであれ信憑性がある情報として一般の方には広がってしまいます。

 医療者である以上、自分の発言の重みをきちんと認識して、情報を発信していかなければなりません。自戒の念も込めて。

 

「社会全体」で取り組む課題

 

 まだ十分とは言えませんが、国内におけるワクチン接種は徐々に普及してきています。

 その背景にはVPDに実際に苦しんでいる子ども達やその保護者の方々の「声」があります。

 ワクチンが導入されても苦しみが解消される訳ではありません。それでも、同じ病気で苦しむ子ども達を少しでも減らすためと、力を捧げて下さった方々がいます。

 国民の皆様にVPDやワクチンについて正しく理解して頂く努力をすること。
 そして、社会全体で一丸となってこの問題に取り組んで行くこと。
 ワクチン接種を普及させていく上で、これ以上の近道はないと思っています。
 そして、これも僕たち医療者の大きな役割の1つだと思っています。

 あなたはVPD、ワクチンについて正しく理解出来ていますか?

 繰り返しになりますが、ワクチン接種を肯定するも否定するも個人の自由です。しかし、「なぜ多くの国がワクチン接種を国策として推奨しているのか」、「ワクチンが誰のために、何のためにあるのか」、「VPDの被害者の方々がなぜ声を上げるのか」、それらをきちんと理解した上で選択をすることがとても重要です。

 自分を、そして、自分の子どもや大切な人達を守るためにも、ワクチンに興味を持ち、一度正しく理解を深めてみてはいかがでしょうか。

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 以下は「KNOW★VPD! VPDを知って子どもを守ろうの会」というNPO法人様の公式ホームページURLになります。(法人様の許可を得て紹介させて頂いています。)

 この記事を読んで、少しでもワクチン接種に興味を持って下さった方は「NPO法人KNOW★VPD! VPDを知って子どもを守ろうの会」のHPが参考になりますので、ご覧ください。

・ ワクチンについて
・ VPDについて
・ ワクチンスケジュールをサポートするアプリ

 など、VPD、ワクチンに関する最新情報や患者さんの体験談、サポートシステムなどがあります。

 URL http://www.know-vpd.jp/