スポーツのNetflix – DAZNやESPNのビジネスモデル –

Kazu Shimura

Kazu Shimura

志村一隆

 8月10日に米国ディズニーがMLBのネット配信会社「BamTech」の33%株式を10億ドルで取得したと発表した。Bam Techは、MLBがネット配信をするために設立した会社である。(MLBはMajor League Baseball;大リーグ野球。BAMはBaseball Advanced Mediaの略)

 2000年代初頭から米国のプロスポーツ団体はネット配信に積極的である。スマートTVが発売された頃、見られるアプリとして必ず搭載されていたのは、NBA.comやMLB.tvだった。サンフランシコ・ジャイアンツも自分たちで撮影部隊を持ち、格好いいWebサイトを運営していた。日本でもApple TVを通せばMLB.tvが見れるし、MLB Japanのツイッターアカウントは、大リーグのホームランシーンなどを動画で流している。

 ディズニーはこのBamTechに出資し、傘下のスポーツ専門ケーブルチャンネル「ESPN」(日本のJ SPORTのようなもの)のネット配信を始める。月額定額制の見放題。BamTechの技術とコンテンツ、それにESPNのコンテンツを合わせ、野球だけでなく、バスケ、アメフト、ホッケー、サッカーなどを見られるサービスとなるだろう。つまり、映画やドラマを月額数百円で見放題できる会員制ネット配信サービスのNetflixやHuluのスポーツ版である。

 ディズニーがこうしたスポーツのネット配信を始める背景は、稼ぎ先だったケーブルテレビの成長が2001年をピークに止まってしまったからだ。最近は、ケーブルテレビや衛星放送は新たなサービスとして、人気はあるけど視聴料が高いチャンネルを外してスリム化したパッケージを売り出している。500チャンネル見れる多チャンネルが売りだったハズの今までのケーブルテレビとは正反対の戦略である。ESPNはこうしたパッケージから真っ先に外される。だったら、自分たちでやろうというわけだ。

 

日本では? パフォームの「DAZN」

 

 日本でもディズニーに先行した同じ動きがある。ソフトバンクのスポナビは、ドイツや英国のサッカーリーグ(プレミアやブンデスリーガ)の国内権利を獲得し、月額3000円(ソフトバンク契約者は500円)で試合配信している。

 さらに、英国スポーツ動画配信会社のパフォームが「DAZN」という月額課金制のネット配信サービスを欧州3ヶ国(ドイツ・スイス・オーストリア)で始めた。月額9.99ユーロ(1,130円)。パフォームはJリーグの配信権を10年総額2,100億円で獲得したが、DAZNは日本でもスグ始まるらしい。

英国パフォーム(DAZN)のビジネスモデル

 

 パフォームは、90年代に英国NTLというケーブルテレビ会社がプレミアリーグのネット配信を行うために作った会社(Premium TVという名前だった)がその前身である。その後、ロシア人の大富豪がもう1社スポーツ権利の会社「Inform」と一緒にし、名前をパフォームにした。現在もその会社Access Industriesが85%の株式を保有している。

 元々は、権利処理されたサッカーのゴールシーンなどの動画や画像と簡単なテキスト記事のアーカイブを世界のメディアに売っていた。(ePlayerという商品)日本では朝日新聞が利用している。メディアは、パフォームの管理画面から好きな動画や画像を選べば、そのまま簡単な試合の記事を作れる。「欧州サッカー」というコーナーだけ作っておけば、あとは月額料金を払うだけで記事が完成する。

 他にも、Goal.comやデータ分析会社を買収している。つまり、スポーツのコンテンツを集め、その稼ぎ先として、ePlayerのような法人ビジネスとGoal.comのような無料メディアを運営。そして、今「DAZN」という課金制のプラットフォームを始めるというわけである。

 Netflixで有料放送市場は停滞したが、彼らはスポーツには進出しないと言っている。Netflxが成長していた5年前、米国の友人たちは、スーパーボウルはテレビで見るから、ケーブルテレビは解約せずNetflixに加入していた。月額10ドル程度の料金はオマケみたいなものだったのだ。

 

Skyのプレミアリーグから30年弱

 

 1990年代、マードック先生率いる英国衛星放送のSkyがプレミアリーグを作って、有料放送を成功させた。人口6,000万人の英国で加入件数が1,000万件近いと聞いてビックリしたものだ。今のスポーツ専門チャンネルの成功は、そこから始まっている。

 あれから、30年近く経ち、いよいよ新しいモデルが始まるのだろう。ドラマや映画をNetflixにもぎ取られ、スポーツにも低価格のネット配信時代がやってきた。有料放送はますます苦しくなるかもしれない。

(参考)

  1. BamTechは、大手メディアやプレミアムコンテンツのネット配信として信頼されたのか、CBSのカレッジバスケットボールの配信や、HBOのネット配信も手がけている。
  2. パフォームのメディア向けビジネス「ePlayer」と同じような業態は、他に「iWay Media」という会社がある。
  3. DAZNの日本国内料金は、月額料金は1,750円と発表された。