醤油を楽しむ

T.Otani

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大谷 友次郎

 皆さんが毎日使っている醤油、日本の味の代表選手の醤油ってすごく奥が深い食品だということ、御存知でした?多くの人が利用しているのに、そのほとんどの人があまり興味を持たない醤油。目を向けると面白いこともあるので、この場を借りてお伝えしたいと思います。たまたま醤油に興味を持った、私の経験談をお読みください

 私の本業はIT系ですが、仲良くしていただく多くの方は私のことを「醤油の研究家」とか「醤油の専門家」として紹介してくれます。実際のところは、醤油に詳しくなっただけなので、調査や商品開発をしているわけではありません。

 詳しくなれたのは自分で調べた結果もあると思いますが、多くは醤油を調べだしてからお会いできた、本物の醤油の専門家(醤油の調査をしている方や、メーカーの方々)に教えて頂き、詳しくなることができたと思います。教えて頂いた皆さん、ありがとうございます。

 最初に、醤油に詳しくなった訳と、醤油の世界を簡単にご説明します。

 

醤油に詳しくなったきっかけ

 

 最初のきっかけは、実家で普段使っていた醤油を変えたら家庭の味が変わっってしまったことです。それから同じような醤油を探し始めたのがきっかけでした。2002年か2003年くらいのことだったと思います。私の実家では、お取り寄せ醤油を使っていたのですが、その蔵が廃業(後継者難のため)してしまいました。そこで醤油が大メーカーの醤油に切り替わり、その日から実家の味が変わってしまったというわけです。

 醤油は高くても800円から1000円程度、月に3本~5本購入しても大した金額にならず、求めている味ではなくとも、違いを確かめるのは楽しい作業でした。ただ、購入した醤油がなかなか無くならないのは困りましたが。

 何本試したかもうわからなくなってしまいましたが、少なくとも50本以上は試した頃に、醤油のことをもう少し詳しくなってみようと思いました。

 このころには、実家で取り寄せていた醤油が普通の濃口醤油ではないことは何となく分かり始めていました。ということは、濃口醤油を探しても同じようなものは見つけられない、他の醤油のことをもう少し詳しく調べ、そこから再度探索した方がイイだろうと結論に達しました。まずGoogle先生に聞いてみることにしました。ここから醤油の世界はさらに広がっていきました。

 

醤油の世界の入口

 

 Google先生に「醤油」と入れたことでいろいろわかったことがありました。
 その時わかって、以降役に立ったことを幾つか書かせていただきますが、やはり以下5つの分類があるということが大きなことだったと思います。

[醤油の分類]
1:こいくちしょうゆ(濃い口醤油)
2:うすくちしょうゆ(薄口醤油)
3:たまりしょうゆ(たまり醤油)
4:さいしこみしょうゆ(再仕込み醤油)
5:しろしょうゆ(白醤油)

※詳しくは以下リンクから
「しょうゆの日本農林規格」(農林水産省WEB掲載PDF 平成27年3月27日 最終改正又は確認年月日)

 これは日本農林規格で規定されている分類ですが、多くの醤油と言われるものがこの分類の中にあると思います。

 これらの分類は、原材料の分類でもあり、製造方法の分類でもあり、地域性の分類のひとつでもあり、香・色・味わいの分類でもあります。香・色・味の分類ということは利用方法の分類のひとつとも言えるものであり、これによりさらに深くラベルや味の違いを楽しめるようになりました。

 例えば、味わいに関して、実家で取り寄せていた醤油は、普通の濃口醤油に比べると、うま味が濃く粘度が高かった記憶がありました。たまり醤油は濃口醤油に比べ、粘度が高くうまみが濃い醤油であることがわかりました。そこで実家で使っていた醤油に近いのではないかと期待して購入し、試しました。

・焼き海苔につけて試す。
・炒め物で試す。
・煮物で試す。

 求めていたものではないということがわかる。しかし、少し近づいた気がする。この知ったことを試してみる繰り返しの作業の中、多く醤油を取り揃えている売り場がわかり、醤油分類ごとの味の傾向がわかり、徐々に自分の求めていた醤油に近づいていく実感を持ちました。

 

再仕込み醤油は美味しい

 

 たまり醤油の様な濃さ、濃口醤油の切れ味、その二つを併せ持つ醤油が求めていた醤油でした。

 表示上は濃口醤油だったのですが、その結論は分類を勉強してすぐに出ました。求めていたのは「さいしこみしょうゆ」であったと、試してすぐに理解しました。表示上は濃口醤油だったのですが、うまみや粘度的には再仕込み醤油が最も近いものでした。そこまで行くのに既に2年以上経過した後だったため、記憶も不鮮明でしたが、焼き海苔を付けて試して「これだ」と感じたのは今でも覚えています。

 「再仕込み醤油」とは、通常の濃い口醤油と同様、大豆・小麦・麹・塩で醤油を仕込み、さらに大豆と小麦と麹で醤油麹を作り、仕込み水の代わりに先に仕込んだ醤油で仕込む、うま味の高い醤油です。香り立ちは濃口醤油には負けますが、当然美味しい醤油になります。

 実家の取り寄せ醤油は濃い口醤油でしたが、同じような味わいでした。小豆島のヤマロク醤油の鶴醤(つるびしお)という再仕込みの醤油でした。
 これを試したことで、私の醤油の旅は一旦終わりを迎えました。

 

醤油の旅再び

 

 鶴醤に出会った後、私の実家では醤油は二種類そろえるようになりました。濃口醤油と再仕込醤油(鶴醤)です。

 煮炊き・炒め物等には再仕込を。
 刺身等用のつけ醤油には、濃口醤油を使うようになりました。

 本当は、色々もっと試してみたかったのですが、購入した醤油を1ヶ月で使い切ることは難しく、悪くするのももったいないという気持ちになりました。ここからはゆっくりと月に1本か、二か月に1本程度のペースで、気になったものを購入するようになりました。

 

syouyu

色々な醤油

 

 

 ここで出会った醤油で思い出深いものは、ヤマロク醤油の「鶴醤」と「海苔屋の夢 のりしょうゆ」、それとヤマサの「鮮度の一滴」です。

 鶴醤は、小豆島の美味しい再仕込み醤油です。美味しい上に、東京近郊であれば比較的買いやすいというのが嬉しいところです。美味しくても、普段使いができない醤油は僕の好みではありません。またファンが多いのか、状態のいい商品が多いと感じています。

 のりしょうゆは、名前そのまま、濃口醤油に海苔が入っているだけのものでした。これは使い道がよくわからず、温かいご飯にそのままかけまわすか、卵かけご飯にかけて食べるかしか思い浮かびませんでした。しかし、のりと醤油が合わないはずはなく、美味しいものでした。
※のりしょうゆは、メーカー・正確な製品名の記録がありませんでした。

 そして、鮮度の一滴が我が家の濃口醤油の普段使いのものとなりました。一番のポイントは、醤油のボトル(袋)が酸化防止容器になっており、常温保存でも酸化しにくくなり美味しい醤油を常に使えるようになりました。醤油も塩分が高いと言っても酸化もするし腐敗もします。その速度が酒と比べると遅速なだけで、当然いいものではありません。核家族で少人数の家で美味しく食事をするときに、やはり醤油も美味しくあってほしい。そうすると、「鮮度を保つ」というコンセプトは魅力的なものでした。

 原料は違えど、用途は違えど、原材料は植物性で、そこからできた液体を菌の力により発酵させ、火入れをし、使用する。その原材料がどうだとか、蔵元がどうだとか、この食事にはこれが合うとか、醤油の世界はあまり語り合う人には巡り合わないのですが、日本酒やワイン好きの人たちを語り合うのを見て、醤油に置き換えたらどうなのかと考えたりしています。すこし醤油の話をお酒好きな人たちに話すと、意外に受け入れられ驚きます。

 ぜひ皆さんも身近な調味料の醤油に目を向けて、自分の好きな醤油を探して試していただければ嬉しいです。

(参考)

  1. しょうゆ情報センターHP
  2. ヤマロク醤油「鶴醤」
  3. ヤマサ「鮮度の一滴」