三つの「助」

H.Sekiguchi

関口 宏

 3月。春の兆しの嬉しさはあるものの、3・11東日本大震災の辛い記憶が蘇る季節でもあります。地震・津波のその後はどうなったのか、そして原発は・・・・・

 先日、関西で活躍する気象予報士・防災士の正木明氏とプロゴルファーのタケ小山氏と私、まるで畑違いの3人が、気象・環境・防災について井戸端会議をしました。(その映像が当「独立メディア塾」ドキュメンタリーのコーナーにアップされています。よろしかったら覗いてみて下さい)

 色々な話の中で特に印象に残ったのが、防災士の観点から正木氏が指摘した災害時の三つの「助」の話でした。つまり「自助」「共助」「公助」。どこかでお聞きになった方もおられるかもしれませんが、正木氏が力説したのが「自助」でした。
 

日めくりテレビ「この東京の片隅に」気象・防災編
3月1日より毎週金曜日公開(全5回)


 
 いかなる人でも、いつ何時どんな災害に見舞われるかはわからない。その時、先ず一番に心しなければならないのが「自助」。津波警報が出たら何があろうと先ず自分が逃げる。人はそれぞれ様々な事情を抱えて生きていますが、突然のことに気も動転して、自らが何をなすべきかの「優先順位」がわからなくなる。その時こそ、迷わず「自助」。自分で自分を守ることが最優先であることを、日頃から心しておかなければならないと正木氏は言うのです。

 つまり、自分の身の安全を確保することが出来ない状態では、他の人を助けることなど出来ないことを知っておくべきだという事。心の内では「自分だけ逃げる」ことに大きな葛藤を感じながらも、「とにかく逃げて下さい」と正木氏。あの大震災の時も、大事な人、子供や妻や父母の元に助けに走り、結果、自らが津波の被害に巻き込まれてしまった例が何件もあったそうです。
 
 ですから日頃からお互い、いざという時の避難の仕方を確認し、子供を学校や施設に預けているならば、その学校や施設の避難方法を知っておいて、実際に災害に見舞われたなら、先ず自分自身の安全をはかり、案ずる人は、以前話し合っていた通り避難してくれていることをひたすら祈る。実際そのように行動されて無事再会を果たした人も多かったそうです。
 
 そして次が無事助かった人々による「共助」。避難所などの様子をテレビなどで拝見する度、経験した方でなければわからないご苦労もあるものと思われますが、正木氏によれば、普段から近所付き合いに慣れた人ほどスムーズに事が運ぶそうで、日頃の自分を省みつつ、感じるところがありました。

 最後に「公助」。自治体・警察・消防・自衛隊等の助けを待つ。これが災害時の三つの「助」であると正木氏から伺い、改めて納得した次第です。

 そういえば、 大型客船が沈没する映画が話題になった頃、こんな話が巷で聞かれました。
「例えば君がその大型客船に乗り合わせていたとする。大海原に投げ出された君は、もがき苦しみながら死ぬほど海水も飲まされた。が、なんと幸運なことに、君の前に誰も乗っていない救命ボートが流れてきた。君は必死になってそのボートにしがみつき乗り込む事ができた。そして我に帰り、海を見てみれば、もがき苦しむ人達が他にもいることに気がついた。よく見れば、若いカップル、老夫婦、子供、牧師らしき格好をした男性、この船で知り合って仲良くなった男の医者だ。さぁー、君ならどんな順番でこの人達を助けるか。その順番を教えて下さい」。

 ナゾナゾ話のようで、ほとんどの人が考え込んでしまうのですが、しばらくして出題者から「考え込む必要はない!手の届く一番近い人から助けりゃいいんでしょう!当たり前じゃないですか!」の一言で自分の勘違いに気付かされるのですが、当たり前と言ってしまえば当たり前。でもその「当たり前」が判らなくなることもあるのが我々人間なのでしょう。

 正木氏が強調する先ず一番は『自助』。心しようと思いました。

  テレビ屋  関口 宏
 
 
 大阪 朝日放送テレビ(ABC)で40年つづく朝の情報番組「おはよう朝日です」で、30年間お天気コーナーをつとめている正木 明さんをお迎えして、生活情報としてのお天気から異常気象・台風などの防災に不可欠な気象情報について、関口 宏とプロゴルファーのタケ 小山さんが根掘り葉掘り伺います。
 30年間お天気を伝えてきた経験と、変化する地球環境の中で激甚化する気象問題の中、防災士の資格をとった正木さんが考える生活に密着する気象と防災の問題を考えます。