鳥取駅前のスタバと高齢化

Nao Nishizaki

Nao Nishizaki

西崎奈央

 夏休みに2泊3日で鳥取を旅行した。鳥取駅前は閑散としており、観光地と呼べる場所は鳥取砂丘とその近くにある砂の美術館くらいだった。夕方になると駅前の商店街の人通りが少なくなり、街全体が静かで暗い。夕食を求め、駅前を歩いたが開いているお店自体も少ない。やっと見つけて入った居酒屋の客は私たちだけだった。

 観光中の移動手段は市内バスを利用した。どのバスにもだいたい私と友人を含め8人ほど乗車していたが、私たちを除くと全員60代以上のおじいちゃん、おばあちゃんだった。1日目、鳥取市の観光地として知られる白兎海岸行きのバスに乗ったが、ほとんどの人が曲がった腰を支える杖を付きながら手前の病院で下車していく。子供や学生が圧倒的に少ない。車中では若者の自分たちがどこか浮いている気がしてならなかった。
 することがなくなった私たちは1日目から再び駅の観光所を訪れた。観光所のおばさんは私の顔を記憶しており、微笑みかけてくれた。どこに行ったら良いかを尋ねると、「もうほとんど見るところ残ってないよ」と笑った。砂丘でラクダに乗ることを目的にしていた私たちの「鳥取は砂丘しかないのかもしれない」という懸念はその通りだった。

 2日目の夜、47都道府県で最後の出店となったと東京でも話題になった鳥取のスターバックスが駅から10分ほど歩いたところにあると知り、訪れてみた。店内は席を探すのが難しいほど混雑しており、高校生や私たちと同年代の若者で賑わっている。勉強をする高校生、MacBookに向かって仕事をする人、外国人と英会話のレッスンをする人、東京となんら変わりのない風景にどこか安心した。隣の席を見ると、東京に進学した大学生と鳥取に残った学生の4人組が再会し、近況を語り合っている。「東京にすっかり染まってしまってさびしいな」そんな会話が聞こえてきた。

 3日目の朝、駅前を散歩していると私たちと同年代くらいの学生を多く見かけた。皆「医療看護専門学校」と書いてある建物の中に入っていく。ここで学んだ学生たちは地元に残って病院勤めるのだろうか、東京に出てしまうのだろうか、ふとそんな疑問が頭をよぎった。
 ここ鳥取には、普段東京で暮らす私にはまだまだ実感のない、過疎化と高齢化という問題がリアルに横たわっている。
 SNSやメディアを通して簡単に情報が得られ、人と繋がることが可能になった今、若者の憧れはますます都会に集中している。スターバックスにいる若者を見てそう感じた。それは逆もしかりであり、東京にいてもネットを通して全国で何が起こっているかをいち早く知ることができる。私も当たり前のようにSkypeで兵庫にいる祖父母、従兄弟と会話をする。しかし、実際にそこに足を運んで同じ空気を吸ってみなければ分からないこともたくさんある。鳥取でそれを発見した。

 鳥取は47都道府県の中で最も人口が少ない県として知られるが、ここにいる高齢者は将来誰が支えていくのだろうか。
 最近「地方の街が消える」という言葉を耳にするようになった。東京は今後オリンピックもあり、活気づいているから心配はない、自分には関係のない話、と他人事に捉えていた。
 今回の鳥取訪問で人が少ない、若者がいない街の風景に初めて恐ろしさを感じた。