志村一隆
MWC16の3日目(だいぶ時間が経ってしまったが)パナソニックが可視光通信技術「LIGHT ID」なるものを展示ししていた。これはLED電球の点滅を利用して情報を送る技術だそう。点滅パターンと特定の情報を紐付ける、つまり、モールス信号と原理は同じ?ツー・ツー・トン・ツー。船上から電灯を明るくしたり、消したりして通信する光景をみたような記憶があるが、その点滅をもっと高速したバージョン。肉眼では認識できないほど早いLEDの点滅パターンに情報を乗っける。
たとえば、「この点滅パターンのときは、このウェブページに飛ぶ」みたいな設定しておく。すると、スマホでこの光をかざしただけで、そのサイトにアクセスできる。よくみかけるQRコードの代わりに光にかざすだけ。それにLEDのスクリーンは細かい素子がそれぞれ光を出して一つの映像・画像を表示している。素子に違うパターンの点滅を設定すれば、画面の場所によって違う情報にアクセスできるようなことも可能。
可視光通信技術の道案内
パナソニックでは、その光のパターンを発行することを管理(プラットフォーム化?ってやつ)して、ビジネスにすると言っていた。デジタルサイネージとか駅の案内板とか、美術館の説明板とか。ただ、なんでもできるっていうのは、なんにもできないというっていうパターンになりかねない。
そんなのより、もっと使い方を絞って売り込んだほうがインパクトあるのではないか。たとえば、「このライトに照らされると駅がわかります」っていう街灯とセットで売り込むとか。
路頭で必要な情報は一つ
というのも、パリやバルセロナを歩き廻ってると、ここから一番近い駅はどこなのか?を知るのは結構死活問題だった。なんせ、足が棒になってるから無駄に逆方向とかに行きたくないし、寒いし。そんなときに、駅の方角だけ教えてくれる表示板があるととても嬉しい。グーグルマップだと色々設定すればわかるんだろうけど、歩いてると面倒くさいのだ。
そんなとき、インターネットがなくても街灯(でも表示板でも)にスマホをかざすと「 Fountation駅に行け」とか「Place a la Republique駅まで100M」とか出てくるだけで助かる。グーグルマップが役立つのはそこからだ。ともかく迷える観光客にとって情報は一つでいい。
街灯のカタチも特徴あるものにすれば、より効果的。とにかく、なんにでもアクセスできますっていうのではなくて、「可視光通信は道案内」みたいな一つのイメージから枝葉を広げるほうがいい気がする。
ネットに影響されない技術マーケティング
光を利用した通信手法は、19世紀末、かのアレクザンダー・ベルが「Photophone」というものを発明しているらしい。その時代ならいざしらず、いまは新たな技術もちょっとした改良・改善版しかない。ユーザーニーズはもう技術に覆い尽くされてしまっている。それに、ハード機器からの顧客囲込も成立しずらい世間である。だから、技術マーケティングは難しいんだろうが、「ウチはプラットフォームだけを抑えて」的話も、なんか安直ではある。買ったあとも利用料払ってねというサブスクプリションモデルへの憧れ感もちょっと哀れだ。
まぁ、自分がパリやバルセロナで何回も同じ道を迷ったからであろうが、路上のリアルな課題を解決するためにハードを含めたビジネスを考えてもいいのではないか。
- その後「Photophone」は映画サウンドシステムのブランド名として使われ、いつの間にか消滅した模様。「RCA Photophone」
- 可視光通信について知りたい人は、中川研究所のページに詳しい。