スポーツ – リアルとゲームの境界

志村一隆

米国大リーグや韓国リーグのテレビ中継で「4Dリプレー」というのをやってます。打者をグルっと回って、ボールがバットに当たる瞬間が色々な角度から見れます。

なんだか360度映像=VRのようですが、米国FOXは、ゴルフのVR中継をしています。

最近のスポーツ中継は、こうした映像の進化だけでなく、データも豊富に表示されます。ちょっと前まで、解説者が「打率.250ですから、この4打席めはそろそろ打ちますよ」的なことをよく言ってました。「4回に1回は打つ」ということでしょうが、いまこんなことを言っていては解説者は務まらないでしょう。あらゆる角度からのデータを元にしたコメントが求められるのではないでしょうか。

小説や映画で有名になった「マネーボール」=セイバーメトリクス以来、シロウトもかなりデータ知識を持っています。以前、千葉マリンスタジアムで、代走に出てきた岡田選手に「盗塁してくれー!」と声を出したら、隣の席から「ここでは走らないでしょ」とボソッと言われたことがあります。ヤジもデータに基づいて否定されてしまう時代なのです。

ここまでは、打率や防御率といった肉眼でもわかるデータの話です。

最近はもっと緻密なデータが取得されています。たとえば、軍事用のミサイル追尾技術を応用したTrackman社(デンマーク)の機械は、ピッチャーが投げるボールの回転数といったデータも測定できるそうです。

「ある投手のスライダーの回転数は昨年より落ちている」ということがわかれば、「あまり曲がらない」ので「左対左」でも大丈夫とか、そんな作戦が立てられます。こうした選手のスキルが数値化されると、それを組み合わせたチーム編成も可視化されるでしょう。ここまでくると、ゲームで遊んでいた感覚と同じになってきます。

先日、一緒にゴルフをした友人が、カーナビで有名な米国Garmin社のゴルフウォッチをしていました。この時計はGPS機能が備わっており、プレイ中、刻一刻とリアルタイムでピンまでの距離などが表示されます。全世界どこのゴルフ場でも対応しているそうです。テレビやスマホのゲームでは、自分がゴルフコースのどこにいるのか俯瞰で見るのは当たり前でしょうが、それと同じことがリアルのゴルフコースでもできるのです。

こうしたデジタルなゲーム感覚をウリにする施設もあります。ラスベガスなどにあるゴルフの打ち放し練習場「TopGolf」は、フィールドに設けられたゴール目掛けて打ちながら、スコアを競います。音楽がガンガン鳴り、ピザやビールを飲める場内は、日本で言えばボウリング場に近い感覚でしょうか。

TopGolfのお客さんの70%が34歳以下だそうです。ゴルフにテレビゲーム的感覚を取り入れ、若いファン層を掘り起こしています。こうしたテレビゲーム的なセンスを取り入れ若年層を開拓するマーケティングは、ゴルフだけでなく色々なビジネスに応用できるかもしれません。

サッカーやバスケなどのテレビゲームは、映像も選手の動きも一瞬ホンモノの中継かと思うぐらいリアルにできています。反対に、NBA.comなど米国プロスポーツのゲーム中継アプリは「これはゲームなのか?」と思うほど、選手のデータが豊富に表示されます。ゲームのようなリアル、リアルのようなゲーム、21世紀の人間は、両方楽しむ感覚を身につけているのでしょう。

選手のスキルがデータ化されることで曖昧になるゲームとリアルの境界。選手でなく人間の能力?性格?なども数値化されると、ビジネスや政治などにもシミュレーションとして導入されていくのではないでしょうか。

(参考)

  1. 米国NGF(National Golf Foundation)によると、ゴルフのビギナー人口は、過去最高だった前年からさらに14%増えているそうです。2016年米国のゴルフ人口は、前年より1.2%の減少で2,380万人。
  2. 「レジャー白書2017」によると、2016年にゴルフコースを年1回以上プレイしたことのある人は、前年から210万人も減少、550万人でした。前年から28%の減少です。
  3. トラックマンなどの分析で、ゴルフのスウィング理論は30年前と全く逆になってしまったそうです。