バーチャルリアリティ(仮想現実)を楽しめる映画(1990年代編)

Kazu Shimura

Kazu Shimura

志村一隆

 米国在住の森下暁さんが「JMっていう昔の映画がVR(仮想現実)を扱ってるよ」と教えてくれた。そこで、早速DVDを買って見てみたら、北野武さんが出ていた。1995年公開だが、ハリウッド映画初出演だったらしい。中身もまさにVR的な仕組みが出ていた。

 ほかに「ディスクロージャー」を教えてもらった。これは見た記憶があるのだけれど、VRシーンがあるのはまったく忘れていた。なんだか、ハリウッドは新しい技術を取り込んで作品を作ってる。VRやARといってもなかなかピンと来ないが、映画のなかで見たことのある人は結構多いのかもしれない。そこで、調べてみたら、20年前からVRが登場していた。仮想世界を描く仮想の芸術。今回は、VRやARを軸に映画を漁ってみたい。

Lawnmower Man(ヴァーチャル・ウォーズ、1992年)

 すでに仮想空間を見させるため顔に機械をつけるアイデアが登場している。シリーズ2では電車やATMなどリアルな機械に異常な動きをさせるサイバーテロの様子も描かれている。ダイハード4.0(2007年)で信号機を操作して交通をマヒさせたりする場面が出てくるが、そんなサイバーとリアルが繋がってることを20年前に描いた映画。「Lawnmower Man」は芝刈りをする人。(DVD購入。シーズン2はVeohで)


ディスクロージャー(1994年)

 マイケル・ダグラスとデミ・ムーア主演。話の筋は女性上司によるセクハラ問題であるが、彼らが勤める会社がVRを開発している。マイケル・ダグラスがVR視聴機器を顔につけ、仮想空間に浮かぶファイルやメールを読んだり、手を動かして削除したりしている。同じフォルダにアクセスしている他人も映し出される。クラウドサービスや、そのクラウドで共有されたファイルをチームで編集する「Google Docs」のようなサービスの原型が描かれる。この時代のVR映画はたいてい「仮想世界」を描くのに対し、VRをビジネスツールのように利用する「ディスクロージャー」はいまを先取りしている。(中古DVD購入)

Johnny Mnemonic(1995年)

 キアヌ・リーブス主演。北野武はヤクザの親分役で出演。キアヌ・リーブスは、自分の脳にデータをストレージして運ぶ「データ運び屋」。この映画でもVR視聴機器を顔につけて、ファイルにアクセスするシーンがある。まだまだデータはネット配信するのではなく、CD、DVDなど記憶媒体を使い「運ぶ」時代の作品。(中古DVD購入)

マトリックス(1999年)

 JMのときと同じくキアヌ・リーブスが、うなじにデータ(というかプログラム)を注入される。「Lawmower Man」もそうだが、この時代の「仮想空間」は人間の意識世界を「仮想」に実現するという意味合いで使われている。妄想をデジタル箱庭で作るみたいな感じ。そして、その仮想が人間を支配するという物語。仮想をマトリックスと呼び「system」と呼ぶ。第2作「リローデッド」第3作「レボリューション」は仮想とリアルの問いかけというより、戦闘シーンが延々続くアクション映画になっているので、VR関連としては見る必要はない。(Netflixで視聴)

The Thirteenth Floor(13F、 1999年)

 デジタルで仮想”空間”が何層にも存在し、そのなかで「誰が俺を作った」「この世界は幻か」「世界の果てはあるのか」といった話が入り交じる映画。仮想空間は”symilation”と呼んでいる。この世界は誰かが作っている「ビッグ・ブラザー」的なコンセプトに触れると、いつもジム・キャリー主演「トゥルーマン・ショー(1998年)」を思い出す。いまのVRとはちょっと違うが、映画自体はオススメ。(Amazon Primeでレンタル300円)

 1990年代の映画には脳内妄想の世界を仮想世界として提示するコンセプトが多い。そして「仮想世界が現実と入れ替わる」、「機械が人間を支配しそうになる」といったところから物語が展開されていく。2010年代のVRはもっと軽い。プレイヤーの脳とVRは切り離されている。VRは自分の脳内とつながるわけでもなく、誰かが作った世界観に浸るためのツールである。

 ただ、脳波とつながり、機械をコントロールする 製品もスグ作られていくだろう。とくに、ポルノや軍事目的などは進み方が早そう。これも森下さんに教えてもらったのだが、脳波と兵器をつないで、なにか意識するだけで兵器をコントロールする研究も進んでるらしい。(参考:Neuroscience could mean soldiers controlling weapons with minds, Ian Sample, The Guardian, 2012年2月7日)なにはともあれ、こうした技術は百聞は一見に如かず。NetflixやAmazon Primeで気軽に見られるのでぜひ楽しんでください。